休憩時間の話。 朝倉が愚痴っている。
なんでも男に告白されたらしい。
それは目出度い。すぐに幸せになった方がいいとハッパをかけたら、
優しいだけのデブ男だと言われて返答に困る。
話を聞くと確かに普通ではない。
一緒に住もうと持ちかけるのはわからなくもないが
どう考えてもヒモ生活を狙っているように思える。
そんな彼を見抜けぬ朝倉ではない。
金を無心するので、いい加減にしろと文句を言ったら
室内で焼き肉パーティをやろうと持ちかけられたという。
用意されたのが七輪。
朝倉は換気扇をつけ忘れたから服が真っ黒だと文句を言っているのだが
どう考えても殺人未遂である。
ただし朝倉に練炭は通用しない。
彼女自身一酸化炭素対策が可能な魔術を会得しており、呼吸を長時間止めることが可能である。
呼吸さえしなければ一酸化炭素は怖くないというのが朝倉の弁だ。
呼吸を止めて、別途酸素を供給する魔術を立ち上げれば、あとは換気扇を復帰するだけでよい。
ご丁寧に火災報知器は取り払われていたそうで、かなり用意周到な男である。
おそらくそこそこ収入がある朝倉からお金を奪って、殺してしまおうという短絡的な
犯行であろう。
だが残念ながら朝倉は人間をとうにやめている。 男も運がない奴だ。
しかしこの朝倉の発言に怒ったのはボスではなくもっと上の連中らしい。
朝倉の才能は国家安全保障重要なんだとかなんかだそうで
暗殺も吝かではないというコメントが出たのだ。
朝倉が愚痴っているのは、あくまで自分のプライベートで暗殺騒ぎになっていることだったようである。
自分で身を守れるから放っておいてほしいというところではないだろうか。
話が終わりまさかと思って、冴月にその話をしたら、コミットしたとだけいわれた。
自業自得はいえやるせない話である。