□月 ●日  No1498 さよならジュピター

綿月姉妹邸の門番に普段通り挨拶をしたら二人があちこちに怪我をしていることに気づく。
あまつさえ剣の達人である彼らが何故そんなかすり傷を負っているのかとても疑問に思ったので
思わず聞いてしまったら想像遙か斜め上の展開が待っていた。


それは数ヶ月前のこと、プリズムリバーと騒霊軍団、そしてオレンジと幻想郷の音楽が月面で
空前のブームになった。 古くて新しいということと完全生演奏が受けたらしい。
月人には音楽を趣味として嗜む者も多いためか、理解されやすいという事情もあったようだ。
一体誰がプロデュースしたのかと尋ねたら地上の因幡だと答えられた。
十中八九詐欺師兎としか思えない。


彼女達の成功を目の当たりにした綿月姉妹は対抗策を考えた。 文化面で幻想郷に支配されては
困るという部分もあるのだろうが、対抗してユニットを作ろうと言うことになったらしい。
まあ、ここまでは普通の発想だから問題は無い。 最大の問題点は面子である。
綿月姉妹は何を考えたのか面子を野郎で固めたのだった。


この発想は別に間違ってないと思う。幻想郷の妖怪達だって所謂面食いが少なくないから
綿月依姫が美男子のカミを呼び出してユニットにするのは別に問題ではない。
これが新曲でしてと渡された曲を再生機で聞いたら、それほど悪くないと思う。
これが怪我とどういう関係があるのだろうか本気で疑問だ。


彼ら曰く、音楽媒体が売れないという。
そもそも再生機が幻想郷に普及していないのにどうやって売る気なんだと聞いたら
驚いていた。もうとっくに再生機は幻想郷に普及していたと思っていたらしい。
それだけ聞いて頭が痛くなってきた。


当然、幻想郷にライブで売り込みに来ても一体誰なのか分からないから引っ込めと言われるらしい。
ヤジと共に色々なものが投げ込まれるから避けるわけにもいかず当たって怪我したというのが
真相のようだ。 幻想郷の人は野蛮なんですねと言われたが、全面的に否定しないでおいた。


ふと、何となく思い立ったので二人をアカペラで歌うようにリクエストしてみた。
二人の歌声は、某猫型ロボットの漫画に出てくるアレとよく似ていた。
とりあえず加工しすぎだろうと指摘しておいて、ライブの時は口パクで歌って
スピーカーからの音楽に頼れとアドバイスしておいた。


お陰で頭が痛い。