○月 ▼日 No181 楽園を追放されるものたち


幻想郷の中でルールを守らないまたは守れない妖怪たちはどうなるのか?
それは私がずっと抱き続けていた疑問であった。
納品途中に、なんと博麗神社を襲撃しようとしている妖怪を目撃した。
妖精が、スペルカードルールを挑んできてもそれを全く無視して力づくでねじ伏せてしまう。
とりあえず私は会社に通報した。 本来なら妖怪たちに注意を促すつもりなのだが何故か社畜根性が先に出た。


連絡に出たのは朝倉だった。 冷静な声で「切り札を送る」とだけ返した。
すると程なくしてその妖怪の目の前を塞ぐようにわが社の列車が停車した。
中から現れたのは完全武装の冴月である。 背中に担いでいるのは普段は妖怪たちを幻想郷に送る送還銃であった。
数分もしないうちにその妖怪は幻想郷から姿を消した。


幻想郷の異変を解決するのはあくまで博麗の巫女の仕事である。 これは絶対的なルールである。
だが、幻想郷から追放された妖怪がどうなろうと巫女は関知しない。 "知らないものは探さない"からだ。
会社に戻ると、その妖怪が閻魔様の裁きによって消去されたとだけ記録に残っていた。
あの妖怪はもしかすると、結界の外へ追い出されたのではないか? それは妖怪の弱体化を意味する。
最悪消滅することもある。 幻想の力が弱まった妖怪がどうなってゆくのか、少なくても冴月でさえ火器に頼っている現状を
見れば想像に難くない。 
その妖怪が何を思ってこのような行動に出たのか? 今となっては知る由もない。