○月 ×日  No200 八百万の神


環境に適応することは生命にとって自然の摂理である。 だが適応の果てにあそびがなくなった種に未来はない。
最近、博麗大結界が巨大化または強化の方向に進んでいるが、ところどころで結界にほころびも出来ている。
結界は本来もっとしなやかなのだが、まるでガラスが割れたような崩壊振りだ。
ただここで重要なことは綻びができることこそが結界の防衛反応だということだ。
なぜなら砕けた結界からはそれを補完する柔らかい結界が傷口をふさぐからである。


ボスはわが社の行為を幻想郷にノイズを混ぜるものであると言っている。
ノイズを混ぜることはすくなくても結界そのものが脆くなるのを防ぐ効果があるという。
同時進行で結界の再生成も行われているが、やはり結界の再生成は荒療治であり、そのプロセスの中で
神隠しが発生する事故も想定されている。 現在スタッフが総出でソフトランディングできるような
方法論を模索しているようだ。


冴月に言わせるとボスはもともと幻想郷の住人だったにも関わらず、その安住の地から敢えて
結界の一部となる道を選んだという。 こうした結界の一部となることを選択した妖怪たちを
霊能局が"八百万のカミ"と呼称していた。
幻想郷で利用される八百万の神とは用法が違うが
おそらく博麗大結界の礎となった妖怪たちに敬意を表した表現なのだろう。


結界が再生成されても我々の仕事は変わらないだろう。 せいぜい結界から逆神隠しになった者を
うちで雇い入れることはあるかもしれない。
宴会でどんちゃん騒ぎをしている妖怪たちを横目で見つつ今日も配達は続く。