□月 □日  No230 関わり合いになりたくありません


冴月が珍しく風邪で寝込んだため、白玉楼への配達業務が回ってきた。
白玉楼は、紅魔館を超える危険地帯で知られる。 
特にここに住む住人はうちの社員でさえ近寄りたがらない。
届けるものは庭園用の部材と封筒である。
しかもこの封筒は直接、本人に届けないといけないらしい。
その届け先はなんと白玉楼のお嬢様である。 
その危険度はプルトニウム並みといわれている。


アポをとっているため、今回はあっさり門をくぐることが出来た。
お庭番がしきりにうちの会社に転職した先代のことを聞いていたが、
本当のことを言うとショックで寝込みそうなのではぐらかしておいた。
お嬢様の姿については事前に予習しているとは言え、実際に会うと背筋が凍りつくような
緊張感に襲われた。


まず、言えることは動作や発想がスローモーだということだ。 呆けているといわれる所以だが
これは生活のリズムが我々とは大きく異なっているからだと思われる。
会話は理知的で、考えすぎて思考の袋小路に嵌るきらいがある。 
それがさらなるレスポンスの低下を生むようだ。
食いしん坊のマイペースというイメージがあるが、それは改めないといけないだろう。
お嬢様は封筒の中身を見て目を細めると、受領書に筆でサインしてくれた。ひとまず安心である。


帰り際に桜の枝を一本もらった。 これをどうにかして持ち帰るようにと言付けをもらったので
持ち帰り申請を行うと、いともあっさり通ってしまった。
その枝は現在、ボスの机の上に挿し木をされて飾られている。 春になったら花を咲かせるだろうが
朝倉はその桜は満開にはならないと言って笑っていた。 なんかやばいものを掴まされた気がする。