○月 ×日  No311 ロケットの注文


うちの会社はつくづく因果な商売である。 
幻想郷が混乱状態にあっても月でなにが起こっていても
結局は他人事であり、特に業務そのものは変わらない。
しかしここ数日列車の運行ダイヤが大いに乱れている。 
船やタンカーは正常に動いているそうだから
最悪の事態にはなっていないが迷惑な話だ。
血液などは鮮度が命とあって、遅配が続くとヴァンパイアの主人から
味が悪いと苦情が来てしまう。
血液の賞味期限は赤血球破損までの21日間がタイムリミットだが、
味を確保するとなれば
血小板破損の72時間がタイムリミットだ。


うちの列車はあくまで中間管理職狐の許可を得ない限り、結界を自力で
突破できる設計でも勝手に列車を幻想郷に乗り入れてはいけない決まりとなっている。
今日もまた許可がなかなか下りなくて参る。 
一体何をやっているのだか。


紅魔館からロケットについての問い合わせが来た。 
案件を見ると月に行くためのロケットの費用の見積もりとあるのだが
人間様を送るだけでも莫大な費用がかかるのに、ソファやらベッドやら大方宇宙旅行
いうものを舐めているとしか思えないような荷物がリストアップされていた。
「今のところそれだけの居住性を持つものはありません」と答えるしかない。
もっとも実際問題技術的に可能であっても、恐らく許可は下りないだろう。
莫大な費用もさることながら、納期的にどう考えても間に合わないからだ。
そのことをメイド長やノーレッジ氏に説明しないといけないのだが
防弾チョッキの申請をしたら却下された。
日記を書きながら今日も遺書を書いている。 
いつの間にやら遺書の数は増えて今日で100通目となった。