○月 ×日  No331 幻想郷もグローバル化

最近は妖怪もグローバル化の時代らしい。
欧州からやってきたヴァンパイアの姉妹やプリズムリバー家の面々、
アジア圏の美鈴女史などなど当然、幻想郷内部も他民族文化が進入して
結構面倒なことになってきている。


私が物を配達するときはGPS装置とコンパスは必須だ。
今日は幻想郷にやってきて間もない妖怪から、イェルシャライィムは
どちらですかと聞かれて少し焦った。
実はこれ聖地エルサレムのことなのだ。 
敬遠なイスラム信徒の妖怪の場合こういうことを聞かれるので注意が必要だ。
霧雨店でもコーランと聖書が普通に売っていてなんともカオスな状態になっている。
しかも霧雨店の店員はきちんとコーランを右手で扱っていた。 恐るべし霧雨店。


そんなイスラムの妖怪が、ヒトのES細胞入り豚肉を食べようとしたルーミアを叱り付け
おなかが空いたルーミアがおいおいと泣き喚くところを目撃した。
ルーミアがあまりに泣くものだからギャラリーが集まること。
するとイスラムの妖怪、「豚肉はだめだけど兎の肉はいい」と言うものだから、
ギャラリーに混じっていたブレザー兎が「ええっ」と素っ頓狂な声を上げた。 
たちまち注目を浴びるブレザー兎。ブレザー兎今度は私の姿を見つけて
「人間のほうが美味しい」と言う。 俺かよ。
たちまちギャラリーの視線が私に集まって言葉に詰まった。


「では食べてもいい人間を探しに行きましょう」 
イスラムの妖怪がルーミアにそう話しかけると
ルーミアは分かっているのか「そうなのかー」と答えるばかり。
結局二人は周囲のギャラリーなんておかまいなし
何事もなかったように森へと消えてしまった。
こんな風景は日常茶飯事であるが自分の価値観を他の妖怪に押し付けるのは
御免被りたいと思うところである。