○月 △日  No381 表札がない


幻想郷で個人やムラに住んでいる妖怪に配達するにあたり
非常に困るのは「表札がない」ことだ。
時代劇とかで奉行所の看板がついているのはあれは嘘だ。
視聴者がわかりやすくするための記号にすぎない。


鴉天狗の航空写真つきの地図をぼったくり価格で購入し
物を配送するのだが誤配もそれなりに発生してしまう。
我々の手で地図を作ると逆に警戒されるので
これまではどうしても鴉天狗の地図に頼りきりであった。


それでも住民が不便に感じないのは、みんながお知り合いの
ムラ社会が形成されているからである。
ぶっちゃけ誤配があっても、そこに住んでいる人が正しい
家へと運んでしまうから、どこでどう間違えたのか
訳が分からなくなることもしばしばだ。


色々考えた後、いい方法が思いついたので実行に移してみた。
上白沢の寺子屋にいる学童たちに協力を仰ぐのだ。
よく社会科の授業でつくる自分たちの地図をつくらせるのである。
幻想郷の里は子供たちの調査でも一週間くらいで事足りた。
さすがに遊郭の類は無理だったが、ほどなくして
なかなか正確な地図ができあがった。


試しに配達に利用してみると、誤配がみるみる減った。
子供といえど、いや子供だからこそ、自分のムラをよく観察している。
子供の視点というものは結界の外の世界とまるで変わらないようだ。


ところで上白沢よ。 「お礼に何かあげるから言ってくれ」と聞いたら
「予算」はないだろ 「予算」は。
もうちょっと子供が喜びそうなお菓子やらなんかだと思っていたので
思いっきりがっくりきた。