○月 △日  No391 芸術は爆発か?


幻想郷という隔離空間であっても芸術への想いは外の世界とまるで変わらない。
なにせ妖怪などは時間が有り余っているので、芸術をたしなむ妖怪は
結構な数がいる。


久方ぶりにメトセラ娘に会ったら、焼き物の釜はないかと言われた。
火力が簡単に調節できる奴と言っていたから、おおかた永遠亭の連中とか
最近やってきた変な巫女とかから変な知恵をもらった可能性は高い。


こうした場合、相手にきちんと質問をしてニーズを確実に掴むことが重要となる。
質問をしなければ間違った商品を届けることになる。
「質問」とはすべての商談を進める上での基本だと思う。


よくよく聞いてみれば、最近焼き物職人がメトセラ娘の火力調節能力に目をつけて
どうにかして技術を盗もうとしているらしい。
焼き物職人たちは勉強家でとてもまじめなことは好感がもてるのだが
本業である護衛の仕事をおろそかにしたくないと言うのが彼女の言い分であった。


朝倉に炎を調節することができるカードと釜が用意できないか聞いたら
炎は「業火」とか「烈火」という言葉通り本来は制御が難しいという。
メトセラ娘の場合はバックファイア上等なので問題ないしノーレッジ氏は
芸術レベルの制御が働くので問題ないそうが、素人が使うには危険すぎるという。
結局、朝倉がこれならと言って差し出したのは発電用カードだった。
電気なら火力の調整もしやすいし、出力もAC100ボルトなのでバックファイア時も
ちょっとした感電で済むらしい。


喜んで納品したら、メトセラ娘につきまとう焼き物職人が「風情がない」と
文句を言った。 
実際のところ炭の方が電気より火力があるというのも理由の一つではある。
いい加減腹が立ったので、「炭で手間暇掛けてやったほうがずっと風情が
あるだろう」と言ってやった。 それでも相手は納得しない。
試しにメトセラ娘が実際に釜に火をくべてみた。
物の見事にバックファイアを起こし彼女は真っ黒焦げになったあと 数分で復活した。
それを見た職人たち 肩を落として帰ってしまった。


最初から見せればよかったのね。