お盆の喧噪も静まり、とりあえず冥界も平静を取り戻しつつあるこの頃。
三途の川ではお盆ラッシュの最後の仕上げが行われる。
うちの職員おおよそ50人ほどを三途の川へ連れて行き、死神たちと合同で
川のクリーン作戦が行われるのだ。
お盆の膨大な交通量はいわば前哨戦に過ぎない。
問題はお盆にともなって大量のお供え物が三途の川で捨てられてしまう事実だ。
冥界には基本的に結界の外すなわち「顕界」のお供え物を冥界に
持って行くことができない。
通常、死神が三途の川の渡し賃を要求する際、顕界のものは全部捨てるように
要求するのだが、これは三途の川が冥界への税関の役目を果たすためである。
だがお盆や非常時ともなれば大量の移動者とセットで大量のゴミが発生する。
もちろん、船に乗る前にきちんと捨てる場所に捨てればいいのだが、
質の悪い死神になると、三途の川にそのまま投棄してしまうケースもあるらしい。
ただ、三途の川はゴミが投棄されても水質にはなんら影響はない。
到着すると三途の川の川幅を縮める作業中であった。物凄い人数の死神たちが
念ずると三途の川幅がみるみる縮まる。 そして川底のゴミが姿を表す。
それを魔界の職員がせっせと袋に詰め込んで、我々はそのゴミを分別回収して
幻想郷に持ち込んだ後に八百万のカミの協力を得て自然に帰すわけだ。
ゴミはおおむね食べ物が多い。
昔は果物の類だったのが今は、資源ゴミが少なくて始末が悪い。
うちの職員の一人に「何故鬼たちにゴミを集めさせないのか」と聞かれたが
鬼たちは露骨に利用されるのを嫌う性質があるので残念ながら利用できない。
どこかで爆音が聞こえた。おそらく閻魔様への愚痴を書いた木片が見つかったと
いったところだろうか、毎年どこかで繰り広げられる光景だが
死神たちもいい加減学習しろと言いたい。
ゴミ拾いが終わるとみんなに飲み物が配られる。
賽の河原で石を積んでいる子供もゴミを拾ってジュースにありついていた。
三途の川は意外と平和である。