○月 △日  No393 霊能局のすごいひと


霊能局の小兎姫から「これから囮捜査をするから一緒にどうだ」と誘われた。
ボスにお伺いを立てると、後学のために行ってみるとよいと言われたので
同行することになった。


今回一緒になったのは霊能局の職員らしき長身の男と小兎姫である。
名刺交換を済ませ一同車に乗り込むが、何故か私は一番の末席である
助手席であった。
小兎姫が手をあわせて謝るので、どうやら仕方なしにやっているようだ。
彼女はこれからさらに少女が車に乗るから適当に話を合わせろと言う。
そして少女が何かおかしいと感じたときは合図をしろと言われた。


30分ほど経っただろうか、道端でうずくまっている少女を発見
打ち合わせの少女だろうか。 運転席の真後ろに乗ってもらう。


ミラー越しに後ろを見てみた。少女がまともに映っていない。
幽霊などにありがちな安定したり不安定になったりする姿が目に飛び込んだ。
なるほど、確かに囮捜査だ。 私の予想が正しければ交通事故を起こして
我々を道連れにするタイプのものであろう。


小兎姫に合図を送った。 小兎姫は黙って頷きつつも会話を合わせていた。
長身の男は無表情のまま運転をしている。
そしてとうとう少女は "しかけてきた"
運転席に目をやるとなんと運転手はなく、そこには赤く光る八卦炉があるばかり
あわててハンドルを持とうとしたら、小兎姫は「触るな」と一喝した。


「殺人の現行犯で逮捕だ」と小兎姫は少女の身柄を拘束する。
少女はそんな馬鹿なという表情をしている。 誰もいない運転席のハンドルは
勝手に動き車は霊能局へ向かっている。 長身の男はどうしたのだと少女に聞いたら
「私はなにもやってない」と逆ギレしていた。


霊能局に到着して、長身の男の捜索願を出そうとしたら小兎姫に
「彼は大丈夫」と言われた。 
一通りの手続きを終わらせた後、自動車に異変が起こった。 
車のシルエットは小さく折りたたまれてあの中年男が姿を表したのだ。
自動車こそが中年男妖怪の本体だったのである。


妖怪の姿は本来、不定形である。幻想郷で妖怪が少女の姿をしているのは
妖怪向けの商品が「少女が使うのに適した作り」をしているからに過ぎないのだ。
霊能局の職員も侮れないなと感心した。