親が亡くなって孤児になった子供達。
顕界ではこういった人たちの駆け込み寺がいくつかある。
児童相談所や宗教施設などそれは様々だ。
幻想郷の場合、多くはムラの中の誰かに引き取られるかするのだが
それが出来ない場合、妖怪が引き取ってしまうケースがある。
さながら狼少年のごとくである。
ただし幻想郷の妖怪は社会性を持って一部は人間との接点を持っているから
傍から見れば子供と保護者にしか見えない。
しかし、そんな関係も限界に近づくときが来る。
幻想郷にある某詰め所。 様子見と冷やかしに来たつもりが
間が悪かったのかとんでもない雰囲気の場所に足を踏み入れてしまった。
泣きじゃくる妖怪少女と難しい顔をしている小兎姫だった。
人の顔を見るなり「裏をとってくれ」と頼まれた。 渡されたのは似顔絵。
きちんと報酬は出すというので受けることにする。
中有の道でその人物を発見。なんでも泣いていた妖怪と一緒に住んでいた人間らしい。
会ってみたら晴れやかな表情で驚いた。 あまりに対称的だったからだ。
戻ってみたら今度は弾幕戦の真っ最中だった。 だが様子が少しおかしい。
霊能局の人間が私に近づいて避難するように促してきた。
なんとなく見当はつく。彼女は逮捕して欲しかったのだろう。
それが叶わなければ、やることは一つしかない。
よく見ると弾幕戦に見えたそのもみ合いはスペルカードの奪い合いだった。
ところどころで暴発しながら発動しているようだ。
最後は小兎姫がその少女妖怪に当て身をしてどうにか落ち着く。
とりあえず、その人物からの伝言を書き記したメモを置いておく。
これが少なくても彼女にとって救いになることは間違いないからだ。
が
小兎姫の話はもっと驚くべき事だった。
この妖怪は子供を育てて大きくなった時を狙って補食する妖怪だったのである。
里の人間の衣服を着ていた人間を補食していたので逮捕したらしい。
泣いていたことも小兎姫に言わせれば演技なのだという。 スペルカード発動に乗じて逃げる
腹づもりだったようだが、何とか捕らえたというのが真相のようだ。
しかし確かに里の人間を食べるわけにはいかないが、コミュニティから逸脱した人間なら話は別だ。
この妖怪を裁く法はないのである。
メモ紙を見て二人で嘆息する。 そこにはこの少女妖怪への感謝の言葉が綴られていたからだ。
「納得づく」だったようだ。
幻想郷ではこうした案件も珍しくない。
顕界の発想で考えていると気が狂いそうになるが、最近こういうものだと割り切るようになってきた。
つくづく因果な商売だと思う。