□月 □日  No629 幻想郷脱出後のフォローフロー


非常事態が解除されたので会社に戻る。
結局、霊能局の茶々で襲撃が回避されたらしい。 
小兎姫のことなのでおそらく力尽くで回避したのだろう。


ボスの指示で菓子折を持って霊能局にお邪魔する。
霊能局もうちの会社とあまり雰囲気が変わっていない。
少女妖怪もいるし、幻想郷の服装をした人も何人か見かけた。
小兎姫に会うと、ちょうど幻想郷から脱出した顕界の住民を捕獲する作戦を実行するところらしい。
後学のため同行することになった。


幻想郷から外の世界に戻ることは容易なことではない。
仮に博麗神社を経由して首尾良く外の世界に脱出したとしても霊能局がすぐに保護することになる。
彼らの任務は幻想郷の存在を隠すことではない。 彼らに精密検査を受けさせて
異常がないかを確認するためである。 
ちなみに費用は全額国家持ちだ。 考え方によっては無料の人間ドックを受けるようなものだ。


幻想郷では幻想入りした病気が今も残っている。 外の世界から持ち込まれる病気も怖いが
その逆はもっと怖い。 特に天然痘ウイルスは幻想郷の外では撲滅されているため
幻想郷から流れ出したら大変なことになる。 
そこで多少荒っぽいやり方でも彼らを病院に隔離することが必要になるのだ。


私の場合は指定伝染病予防接種を受け続けることになる。
ツベルクリン反応もやるし種痘も行う。 面倒なのだがまあ仕方ない。


脱出した人をヘリコプターで追跡して、手早く拉致する。
抵抗されると思いきや、多くの場合捕まった人は安堵の表情を浮かべる。
中には突然寝てしまう人や泣き出してしまう人、反応はさまざまだ。


この日、捕まった人は二人。
彼らに事情を説明してしばらくの間入院してもらうことになる。
もっとも入院と言っても暇をもてあます余裕はない。 事情聴取や各種書類の書き出しなど
いろいろと行政上の手続きをしてもらうことになる。
幻想郷暮らしが長いと免許が失効している場合もある。
自動車免許を再度取るために、ベットの上には学科教本が乗ることもある。
幻想郷から戻れば戻ったですぐに元の暮らしにならないのが我が国である。


最近は幻想郷から脱出した人たちによる市民の集まりなんかもあるらしく
幻想郷から脱出したときの法律相談とかも定期的に行われているそうだ。
そんなことをして、幻想郷の存在が世に知れ渡ったらどうするのかと小兎姫に尋ねたら
そういう人たちにコントロールのために組織があると言われて妙に納得してしまった。


世の中は奥が深い。