□月 □日  No630 魔力の源


うちの会社に保護されているエーリッヒ博士にお会いする。
幻想郷に物資を運ぶ列車を開発した人物の一人。里香女史が乗る戦車の基本設計を組み上げたそうだ。
怪しすぎる姿のため危険人物と思っていたが、なかなか話せる人で一安心する。
私が幻想郷へ出張している間、結構いろいろなことが起こっていたようだ。
かいつまんだ話を総合すると米帝の量産ヴィヴィットを月に送り込む計画が頓挫したらしい。
開発者であるエーリッヒ博士がここにいることから、何かしらの動きがあったことは確かだ。


博士は、新たなエネルギー源は争いを誘発すると言っていた。
化石燃料を得た人間は二度にわたり世界大戦を経験した。
今でも化石燃料を巡って争いは続いている。
ヴィヴィットはあらたな魔力というエネルギーの有効性を世界に宣伝することになるが
利用したときのリスクは原子力を超えると言う。
それは、ルーコトの背中に表示された放射能マークを見てもわかる。


朝倉の話では、この魔力を生み出す炉心が一度大暴走したらしい。
この暴走によって博士は娘を失い、スポンサーだった霧雨店の社長は大の魔法嫌いになったという。


魔力を安定して利用するためには、炉心をレアメタルを用いた外殻で囲まないといけないらしい。
このレアメタルは「オリハルコン」と呼ばれるもので、あまりにコストが高くつく。
ルーコトは炉心をスペルカードで代用することでコストを抑えているそうだが、長時間連続運用は不可能で
一日に一度は充電作業が必要となる。 改良型の炉心を用いたヴィヴィットも常時炉心を動かすのでなく
スペルカードに充電しながら動かすという方針をとっているようだ。 結構難儀なつくりらしい。


岡崎は博士の指導をとても素早く吸収しているらしい。 彼女にとっては至福の瞬間に違いない。
自分の研究を認めて貰えるだけではなく、同じものを研究している同志に巡り会えたのだから当然だろう。
しかし、彼女の研究が学会に認められなかった理由もまたエーリッヒ博士によるものだ。
因果は回る糸車とはよく言ったものだと思う。 岡崎が幸せそうだからまだいいか。



事故を起こした炉心はある少女の手に渡ったそうだ。 現在ではオリハルコンの外殻のおかげで暴走の
危険性はないらしい。
余談であるが霧雨店の社長は、事故を恐れるあまり魔法から故意に娘を離していたがそれが逆に
娘の魔法への興味を喚起する結果となったようだ。 皮肉な話である。
娘に「勘当」といえばびっくりして魔法から手を引くと本気で信じていたそうだが
結果はこの有様である。