□月 ●日  No706 小兎姫の手記(一部愚痴)


朝、まだ暗い内に起床。 少々寝不足気味。
移動しながらコンビニのサンドイッチで朝食。私の主義に反するが仕方ない。
今日はエーリッヒ博士を米帝に帰す日。


早朝の関西国際空港。 私は部下と一緒にエーリッヒ博士を護衛する任務につくことになった。
博士は終始ご機嫌だった。 ヴィヴィットを月に直接派遣しないで済んだし、
彼の目的を十分達成することができたからだ。


博士は私にこう教えてくれた。
「過ぎたる力を得たらそれを使いたくなるのが人情である。」と
博士の希望通り月での人間と現地住民のコンタクトはスペルカードで行われた。
まさか現地住民が自らの武器を使わないでスペルカードルールを採用したことに驚きを感じるが
博士は月人には余裕があり、しかもゲームなら相手を殺傷することも最低限で済むわけだから
申し出を断る理由はないと仰っていた。


ヴィヴィット直接けしかけて月人が使う武器情報を得ようとする計画が頓挫し、
作戦はあくまで妖怪たちが月へ侵攻することを見守るという計画へと変更された。
妖怪たちが代わりに戦ってくれるから費用を工面する必要もない。
あとはロケットを作るための費用をバイパスを経由して提供し続ければよい。


月の技術が人間の手に広がってしまうのはリスクがある。
妖怪たちがスペルカードルールを利用すれば、月人は自分の手の内を晒すことなく
しかも月の技術が地上に流出することを防ぐことができる。
これで博士は安心してヴィヴィットの完全版を開発することが出来るわけだ。


飛行機には桜崎とミリア氏が護衛している。
多少のミサイル攻撃は二人が対処してくれるだろう。
外で数回爆音が鳴ったのは想定の範囲内である。


博士が本国に戻れば当局はおいそれと手を出すことができなくなるだろう。
博士は沢山の私兵を雇っていると言われている。
ミリア氏も博士の私兵の一人だ。 おそらく私兵のパフォーマンスを見せつけるために
同行しているものと思われる。


機内食がまずくて仕方ない。
どうしても機内食は苦手だ。 お世辞にも余り美味しいものではない。
幻想郷の食べ物が食べたい。かなり切実に。
水は温くて気持ち悪い。 しかも浄水器のせいか味気がない。
結局冷たいオレンジジュースばかり飲んでしまった。


米帝に無事入国して、博士の私兵のひとりゲイツ氏に身柄を引き渡して任務は完了となる。
久しぶりにお会いしたゲイツ氏のお腹がずいぶん出っ張って幻滅した。
前はダンディーなおじさまだったのに。 月日って怖い。
何故かエルヴィスプレスリーを思い出してしまった。