□月 ●日  No733 防人の石碑


幻想郷に滞在していたゲイツ氏が帰還。送迎のため同行する。 
最初は怖い人だと思っていたが、いざ話してみると結構話せる人だと分かった。


あとで朝倉に聞いた話だが、ゲイツ氏は今から数年前に人間の手から幻想郷を
守った人物らしい。 今回の目的も幻想郷に慰霊碑を建てる為の算段を整えていたという。
そしてこのたび英霊帰省ラッシュに先立って帰ってきたそうだ。
確かにこの日を逃したら列車が確実にラッシュアワーと化す。


顕界でも幻想郷を狙っている人がいることは第三帝国の件でも明らかだ。
ごく希に自分の実力を満足に分かっていない愚か者(ゲイツ氏談)が幻想郷に進入しようと
軍隊まで持ち出した時があったという。
彼らはクーデターを起こすという名目で集まったが、彼らの目的は別にあった。


彼らの狙いは幻想入りした宝の数々。 お金にすれば天文学的な額になるのは明白だ。
そしてそれだけの金があれば、世界を経済力で動かすことだって出来る。
それでも誰もやらないってことは、皆が失敗しているからだという訳だが
よせばいいのに幻想郷に喧嘩を売ってきたという次第。


もちろん妖怪の力を借りれば彼らを制圧するのはとても簡単だ。
だがそれは妖怪たちの存在を明らかにすると同時に幻想郷の存在を世に知らしめることになる。
そこで白羽の矢が立ったのはエーリッヒ博士が所有する私兵たちだったようだ。


彼らが多大な犠牲を払って幻想郷を守っていたとき、
博麗の巫女は大事をとって冥界へと避難していたそうだ。
実際のところは多数出た霊魂を死神達が捌ききれず、幻想郷のあちこちで花を咲かせるという
異変が起こっていた。
隙間妖怪にとってはそれは丁度いい異変に見えただろう。
閻魔様や死神たちにはいい迷惑だったようだ。


こうしたことは水面下であちらこちらで行われていることらしい。
実際は軍隊が集まる前に、情報戦によって事前に計画の内容を察知し
首謀者を逮捕または暗殺するのが基本だそうだ。
正確には暗殺と言うより一人で幻想郷に送り込むともいう。
飢えた妖怪たちのど真ん中に投下すると、あっという間に骨の髄すらすすられてしまうだろう。




幻想郷のはずれ 無縁塚にその慰霊碑はある。
よく見ると慰霊碑は一つだけではなく幾つかあることに気づくだろう。
そこには大結界の防人の名が掘られているという。
彼らの活躍を語る者は幻想郷に存在しない。