○月 △日  No390 ボスという人物について


幻想郷に物資を運び続けるためには、数多くの取引先の仕事が欠かせない。
ボスはうちの人間が取引先に対して「下請け」という言葉を使うと
烈火のごとく怒る。
彼女はあの外見で数々の接待をこなしているようだ。
さすがに居酒屋などとはいかないがホームパーティはよく開いている。
彼女は彼女なりにかなりの苦労と努力をしていることは間違いない。


北白河が、来客にコーラを用意していた。
普通ならコーヒーやお茶と言ったところだろうが、ボスは担当者の
飲み物の好みを理解していて、好きな飲み物を用意させるようだ。
夏の暑い日では、水分補給に麦茶を用意する。 
麦茶は利尿作用がないので水分補給にきわめて有効らしい。


ボスは取引先の面々にもクサい台詞を言う。
曰く「世の中に役に立つ仕事をしなさい」
曰く「身を滅ぼしてこそ立つ瀬もある」
そんな彼女に心酔するものも少なくないようだ。 
誰かだか「たとえ、ボスが男でも惚れる」と言っていた人もいた。


朝倉はその言葉を聞くとちょっと感極まるようだ。
今のシステムを立ち上げた時のことを思い出すらしい。
朝倉はボスが自らを「祟り神」とされることを選択したと言う。
祟り神とは、怒りに身を任せて他人に害を与えるばかりではないらしい。
朝倉に言わせれば、祟り神とは、怒りや憎しみを昇華させながら中和する役目を
持った存在だという。 そのプロセスで人に害を与えるとしてもそれは最小限に
抑えられる。 怒りや憎しみは際限がなくそれを一定水準で押さえ込むことが
祟り神の任務であるらしい。


北白河が立ち去った後で、ふとコーラのパッケージを見たら
キューカンバー味と書いてあった。 いくらなんでも来客にキューカンバーは
まずいだろうと北白河に指摘したら、なんとこの取引先は顕界に住む河童の
経営者だったそうな。 なんてこったい。