○月 △日  No362 身内の安全を守ること


北白河が早い夏季休暇に入った。 お盆になると幻想郷が慌しくなるため
先行で休みを取らせるのである。
実家に帰り大学のころの友人に会ったり、色々と遊んだりするらしいのだが
一緒に冴月やヴィヴィットをつけることになっており、
少々物々しい雰囲気となっている。


私もそうだが北白河は天涯孤独ではない。 
割と裕福な家庭で育ち、何不自由なく暮らしてきた。
彼女が今の大学に通うようになったのも、親の財力によるところが大きいのだろう。
そんな彼女が岡崎と一緒に幻想郷に旅立っている間、休学状態になっていたらしい。
そのことが原因で北白河とその家族の仲は少々険悪になっているという。


今回、北白河に帰郷を薦めたのは岡崎だった。
岡崎には家族がいないらしい。何故か本人は話したがらない。
彼女なりに苦労したのだろう。


ボスは北白河を入社させるに当たり、大学から卒業資格をとりつけてきたらしい。
さらに両親を説得するために老紳士の傀儡を操っている玄爺を同行させた。
破格といえる待遇である。


私はこの待遇の理由を知っている。
彼女の身内の身元確保のためだ。
われわれの仕事は時として、この世の中の理に触れるときがある。
それは、人によって害になるものも数多くある。
そんな情報が身内を通して漏れないように監視したり
身内に成りすました何者かを処理したりするという。
朝倉に言わせれば、「妖怪たちと縁を持った人間の宿命みたいなもの」という。
私も例外ではない。


幻想の世界に触れる仕事、それはとてもシビアで常に緊張感を持ち続けないと
いけない世界である。