○月 △日  No367 ごえんがあるよ


いつのまにか日記のノートが一年分使い果たしていた。
朝倉に発見されると洒落にならないので耐火金庫の中に入れて厳重に
鍵を閉めておいた。
彼女が本気を出せば数分くらいで攻略されそうであるがないよりはマシだ。



小兎姫が会社に遊びに来ていたようで、部内が妙にかしましい。
何の用かと思ったら、ヴィヴィットの様子を見に来たらしい。
米帝製の自動人形が使えるかどうか気になっているのだろう。
岡崎が「便利だけど量産は無理」と言っていた。
ヴィヴィットには根本的な欠陥が複数あるというのだ。


小兎姫が帰って岡崎に欠陥の話を聞いたら
ヴィヴィットに特に欠けているものは「縁」であるという。
幻想郷では特に縁の力が具現化しやすいそうだ。
それは世間一般の人間関係からくる縁から
守護霊のような縁などさまざまである。


これは彼女の学習では簡単には得られないものである。
仮にヴィヴィットを米帝に戻し並列化を図っても
縁は複製することはできない。
そして縁にはもうひとつ重要な役割がある。
「死の概念」を認識させる助けになるということだ。
自分にやってくる「死」を認識したとき、電子的な計算反応から
確固たる「自我」そして「魂」へ昇華される日がやってくるという。


そんな話をしていると横から朝倉の声がした。
「何故私には良縁がないのかしら」と呻いている。
その怨嗟に満ちた声に周囲の空気が一気に暗くなった。
北白河と一緒に医務室に運びいれた。
一人でも運べたのだが、とても恐ろしくてできなかった。