幻想郷でもたついて会社に戻ったら、案の定皆帰った後だった。
警備会社に電話しようと電話帳を探していたら、ヴィヴィットの姿を見つけた。
彼女にはコネクターがついていて外部と連絡を取り合っているようだった。
まさか企業スパイか? 緊張が走るも強制シャットダウンしたら逆に気づかれると判断して
次の日に判断を仰ぐことにする。
ヴィヴィットがメンテナンスをしているところを見計らって朝倉に報告した。
すると朝倉はこともなげに米帝に幻想郷の情報を送っていると答えた。
幻想郷の存在は極秘と知らされていただけにこれには驚いた。
朝倉の話ではこのヴィヴィットの開発者であるエーリッヒ博士に彼の愛娘の捜索情報を
送っていたらしい。なんでも今から三十年ほど前に、魔力エネルギーを制御する実験に失敗して
丁度見学に来ていた娘が行方不明になったらしい。
ヴィヴィットという名前はその娘からとったものだったと言うわけだ。
ヴィヴィットは幻想郷に送られた後、理髪店でアルバイトをしていたが
それもいろいろなうわさ話が聞けるためだったらしい。
重要な情報が漏れる心配はないのかと尋ねると、
幻想郷の妖怪は自分がおもしろおかしく生きていればそれでいい連中ばかりなので
あまり問題にならないという。
ちなみに娘が生きていれば40過ぎ。 私より年上である。 期待して損した。
だが、彼女がいなくなった場所は幻想郷。やもすればかつての姿のまま発見というのも
十分あり得る話だ。 少女のまま見つかって果たして彼女が幸せかどうかは疑問ではある。
彼女が生きていることは閻魔様の情報によれば間違いないらしい。
持つべきものは冥界のコネである。
ごく希に西行寺のお嬢様の胃袋に収まる場合もあるらしいのだが、消化される心配はないらしい。
朝倉曰く、なんでもエーリッヒ博士は顕界に初めてやってきた朝倉に科学の基礎を教えたそうだ。
岡崎が幻想郷にやってきたとき渡された雑誌が理解できたのも、そのためだったそうだ。
冴月はエーリッヒ博士のことをメイドフェチのロリコンだと言っていたが、
変態梁山泊の我が部署。その程度のことは些細な問題に過ぎない。
と思う。