□月 □日  No114 甘粕の回顧録5


会社内に明らかに部外者と思われる少女を追い出そうとしたところ
幻想郷の閻魔様と聞いて驚愕する。
閻魔様とは大きな胴体と厳つい顔立ちをした偉大な鬼だと思っていただけに
そのあまりの違いに言葉を失ってしまった。
そこから続く機関銃のようなお説教と愚痴に付き合わされてしまった。
最初はお説教なのだが、途中から三途の川に配属された怠惰な死神達の愚痴へと変わる。
途中から要点を得ない話になり、最終的には何を言いたいのか解りかねる内容となった。


途中から上司が替わって話を聞くことになった。
閻魔様の秘書が100年振りに幻想郷へ転生してしまうため、後任人事をどうするかと
いう相談であった。 今から探しておかないといけないという話だ。
いつまでに探すのかと尋ねると、15年しかないと仰った。
それなら慌てる必要はないと考えるが、妖怪変化や閻魔のように悠久の時を生きる者にとっては
半月程度の感覚なのかもしれない。


閻魔様の秘書。阿礼乙女と言われている。
現在で八代目となり「アヤ」と呼ぶそうだ。幻想郷の歴史を書き残すことを生業としている一族らしい。
強力な記憶力をもち、閻魔様が早口でしゃべる言葉も一字一句漏らさずに書き残すことができる。
まさに閻魔様の秘書にうってつけの人材と言えよう。
一度お会いしたいものだが、彼女の姿を見るのは80過ぎになってからだと言われた。
会えるときは足が無くなってからになるだろう。


先日起きた事故で行方不明になった研究員の娘の安否も同時に問い合わせられたが
残念ながら三途の川や中有の道、裁判室にも該当する人物はいなかったそうだ。
発見し次第連絡すると約束を交わして閻魔様の訪問は終わった。