□月 □日  No618 免許をとろう


魂魄がとうとう自動車教習所に通い始めた。ボスからの業務命令が下ったからだ。
いくら妖怪でも、幻想郷の外では空を飛んではまずい。移動はやはり社用車となる。
自分が思い描くだけで自由に移動できるのと違って、自動車の運転はまだるっこしくて仕方ないもののようだ。


運転免許を取らせるもう一つの理由はやはり身分証明のためだろう。
いい歳したおっさんが、身分証明を保険証でやっているのはやはり気が引ける。
朝倉は幻想郷の外に出てから真っ先に運転免許を取った。
予習が完璧すぎて、無免許運転を疑われたくらいだ。
びっくりしたのは浅間。アル中だから免許を持っていないと思ったら、ペーパードライバーだが
きちんと免許をもっていた。 これは魂魄を勇気づけたのは言うまでもない。


借金取りの天狗も当然のごとく免許を持っている。
天狗は元来自動車よりも速く飛ぶことができるのだが、彼女に言わせれば
夏は冷房が効いて、冬は暖房がかかってとても快適だという。
そういう見方もあるのかと納得してしまった。


とはいえ交通法規は小学生未満の魂魄。 学科ではやくも音をあげた。
止まれの標識や駐車禁止の標識はもちろんのこと、「駐車とはなんだ」から始まっており
まず基本的な用語から教えないといけない有様で、朝倉と私と北白河もちまわりで
強化合宿状態となっている。
運転もよせばいいのにマニュアル運転を選んだため、ミッション変更でエンストを繰り返し
ちょっと走っただけでわーわー騒いでいる状態。
それでも運動神経はよいのでなんとか物になりそうな按配だ。


とりあえずの目標は仮免許取得といったところか。
北白河が社用車で練習すると、スクラップにされるからやめてほしいと訴えていた。


このままだと費用もかさむと皆で頭を抱えていた矢先
ちょうど顕界に戻っている明羅女史を発見、知恵をもらうことにした。
すると、彼女は魂魄を連れてドライブにでかけてしまった。
うらやまし もとい あまりに遅いので心配になって連絡してみると
魂魄が電話口で交通法規が理解できたと息巻いていた。


夜遅く帰ってきた明羅女史に話を聞いたら、
「技は盗む物」だといってそのまま帰ってしまった。
とりあえず、小学生レベルの交通法規を覚えた魂魄
この調子で仮免許合格を目指してほしいものだ。