□月 □日  No617 幻想郷でも暴動


幻想郷だからといって常に誰もが幸せであるとは大間違いだ。
特に問題となるのはちょっとした暴動である。
幻想郷では時たまあちらこちらで暴動が起こることが知られている。


幻想郷では明確な為政者が存在しない。いわゆるムラ単位のコミュニティで成り立っている。
年貢といったものはないものの、小作農の割合が高く、貧乏な者は限りなく貧乏暮らしとなる。
食い詰めた人たちが時たま暴動を起こし、小競り合いを始めてしまう。
こうした場合暴動の矛先は概ね商家に向けられる。
経済活動の結果特定のところにお金が集まるのはある意味仕方ないことかもしれない。


暴動になると妖怪たちは無視を決め込むことが多い。
どちらについても最後は袋だたきにされるばかりで碌なことがないことを悟っているからだ。
鴉天狗ですら記録用の写真を撮るばかりで、直接報道しようとすらしない。
彼女たちに言わせれば、自分の情報によって暴動が伝播することを恐れているのだという。
肝心なところで鴉天狗たちは自分たちの本分を解っている。


紅魔館の周囲は殆ど暴動が起こっていない。
周辺住民に話を聞くと、偉大な吸血鬼が守ってくれているので感謝こそすれ暴動を起こすなんて
とんでもないと言うのである。
魔女がもたらす高品質の肥料で土壌はとても肥沃だし、贅沢暮らしがもたらす経済効果で
常に周辺の商家が潤っている。 紅魔館周辺の所得がほかの地域よりも2割くらい高いという
データすらある。 まさに紅魔館さまさまなのだ。
一方で暴動を起こす者たちは紅魔館を標的にできない。まず自発的に紅魔館を守る者がいる。
突破できても大半が美鈴女史の前に倒れるだろう。
運良くそこを突破してもメイド妖精や魔法使いの前に消し炭と化す。


万が一暴動が起こったらどうするか?
店を閉めて、自警団たちがやってくるのを待つしかない。
最近ではメトセラ娘がやってくるだけであっという間に暴動が静まってくれるので大助かりだが
過去には、倉庫を破壊されて廃業に追い込まれたり
妖怪の少女に手を出してしまって、逆に食べられてしまったり、たいそうカオスな展開に見舞われる。
幻想郷の暴動はたいてい自滅で幕を閉じることになる。


その後神社仏閣が救済活動に乗り出してとりあえず事が運ぶ。
というわけで今日はその神社仏閣に食い物を送っていったのだが
最近はポーズで暴動を起こした振りをしている民衆もいるそうで始末が悪いらしい。
道理でメトセラ娘がやってきただけで収まるわけだ。
民衆のたくましさをちょっと垣間見た日であった。