□月 ●日  No760 小兎姫はだれでしょう


最近小兎姫は果たして人間なのかと疑問を抱くようになった。


それは魂魄が普段使っている銃を見せてもらったときにこと。
アホみたいに大口径で威力を最優先している代物だそうで、
少女相手に使うにはあまりに大袈裟すぎると思う。
試射させてくれと頼んだら、普通の人間が使うとあっという間に手がしびれて
使えたものではないと言われた。
なぜなら妖怪の筋力に合わせたもので普通の人間が使うことをまったく考慮されていない
からだそうだ。


それと同様の拳銃を使う人がもう一人いる。小兎姫だ。
彼女もまたありえない大口径の銃を使っている。
普通の人間でさえ試射すら満足にできない人間の限界に迫った性能であるにも関わらず
軽々と使ってみせる。おおよそ女性が使う銃ではない。
ヴィヴィットでさえ満足に使えないのだから小兎姫はむしろ人間以外の何かと思った方がいいと思われる。


朝倉は小兎姫とはかなり古いつきあいだが、彼女が過去何をしていたのか、どういう
経歴なのかは知らないらしい。 偽名を使いしかも外見すら自由に変えられる冴月に近いかも知れない。


合コンの時に久々に小兎姫が出席したときのことだ。
彼女が年齢を詐称しているのを目撃した。
万年詐称組の朝倉と違って彼女が年齢を詐称するのはあまり必然性を感じないのだ。


こういう話もある。魂魄が会社に入ったときすでに小兎姫はいた。
すると年齢は確実に三十路を越えているはずだが、外見の年齢は20代前半を維持している。
魂魄はむしろ月兎の兵隊に近いと言っていた。
身のこなし方も殆ど同じだし運動神経も酷似している。
これは憶測だが地上で育てられたブレザー兎なのではないかと思えるのである。
その証拠に彼女の目はブレザー兎と同じ色をしているではないか。


朝倉にその話をしたらアホかと言われた。
彼女が人間であっても人間じゃなくても別に付き合いは変らないし
レディに余計な詮索はしない方がいいという理屈である。
詮索して欲しいひと筆頭に言われたくないと思っていたら
聞いてもいないのに「自分だって詮索されてほしくないところがある」と言っていた。
なんとなく寂しそうな表情をしていたのでこれ以上聞くのはやめた。


ボスはみんな胡散臭いのだから小兎姫くらい胡散臭くても別に問題はないと言って笑っていた。
聞いた自分が悪かった。