□月 ●日  No759 魂魄妖夢 考


配達の関係というか、あまり関わり合いにならない妖怪というものがいる
たとえば白玉楼の現お庭番なんかがそれにあたる。
私は彼女が大の苦手である。
まず融通が利かない。 少しでも商品の仕様が違っているだけで大騒ぎする。
梱包の少しの違いすら文句を言うので、彼女宛に配達するときは開封してから
渡しているらしい。 同僚の証言だから間違いない。
割と大らかな妖怪たちが住う幻想郷にあってとても神経質なのだ。


最初は可愛い女の子という評価のお庭番だが
何度か接していると、疲れるという評価に変る。
酷いケースだとできるだけ避けているという有様だ。


余りに細かな性格なのでどうにか改善できないかと同僚から相談を受けた。
真っ正面から相談しても斬りつけられそうで怖い。
できれば完全武装またはアームスーツあたりで行きたい気分であるが
臨戦態勢のまま行ったら却って斬られるという結論に達し
丸腰で行くことになった。


白玉楼の主人は大らかな性格だというのになぜ彼女がここまで神経質になっているのか
わからないが、たぶん先代である魂魄を見て反面教師になったと考えられそうだ。
朝倉からの話しだが、どちらかというと白玉楼の主人を守っていたと言うより
白玉楼の主人から守っていたという位置づけだったそうである。
そんな彼の姿を見れば、本来の目的から逸脱していると思われてもおかしくない。


ところがボスの証言で少し悩んでしまった。
実は魂魄もボスと最初に会ったときはとても神経質な性格だったらしい。
会社に来てからは大分適当になっているが、現代の企業にすぐに馴染むくらい
細かな性格だそうだ。 普段の会話から想像できない。


納品がてら説明しに意向としたらそこに止めに入ったのは魂魄だった。
彼女の性格や対応はある意味仕方ないというのである。
白玉楼の主人と接するのは危険物と接するのと同じだというのである。
もちろん慣れればそれほどでもないが、常に緊張感の中に身を置いているらしい。
ちょうど原子力を扱う仕事のようなもうのと思えば良いという。


魂魄からのアドバイスにより、白玉楼の主人の目の前で納品してみた。
つまりお庭番はどこまでが許容範囲なのかわからないのである。
二人の目の前で納品すれば、主人がうんと言って全てが終わる。
白玉楼の主人はわりと大雑把な性格らしく、いままでお庭番が駄目と言っていた商品も問題なかった。


仕事をするときは相手の事情をきちんと理解した上で行った方がよい。
面倒を回避するには、ただ単に相手の言いなりになるだけでないということを
学ばされた一日であった。