○月 △日  No363 騒霊加算


新築したばかりのプリズムリバー三姉妹の建物の一部にクラックが入ったというので
里香女史と動向で調査に出かける。
建物内はえらいことになっていた。 


調度品はことごとく落下してガラスは数枚割れている。
防音仕様のため、厚手のガラスを用意してさらにシリコンでシーリング処理を
施しているのだがそれらが割れたとなると、どうしたものか考えるだけで憂鬱になる。
建物にはいくつかヒビが入っていた。 
クラック補修用充填材を手配することにした。


地盤が原因とも思われたが、不同沈下の形跡もない。
この建物は設計段階から三姉妹の音楽でこのような現象が
起こらないようにしていたはずである。
突貫工事による施工業者のミスとも思ったが、職人気質の河童たちがそんなことを
するとはどうしても思えなかった。


里香女史がふと建物の奥を指差した。
そこにはプリズムリバー三姉妹とは違う騒霊がいた。 
以前工事中に会ったあの「カナ」とかいう騒霊に間違いない。
彼女は騒霊だが、いわゆるラップ現象のような物理的な影響力で
音を奏でるタイプらしい。
せっかく建物が新しくなったのに、結局お客が来なくて退屈していたという。


追い出すべきかどうか悩んだが、当のプリズムリバー三姉妹からは
なにも苦情がきたことがない。
カナに何故文句を言われないか聞いたら、キーボードを持った娘に
新しい音色を「さんぷりんぐ」させてほしいと言われていたそうだ。
それって利用されるだけ利用されているだけのような気がする。


ボスに報告したら、当面は対処療法で補修を繰り返すと指示を受けた。
ひどい話だ。