△月 □日  No495 いつの間に口座開設


エレンのマジックショップから月で使われているというパワードスーツなるものを
預かることになった。 彼女が一体どこからそんなものを手に入れているのか不明だが
個人的に興味があるので朝倉と一緒に見てみることにした。


誰だこのスーツのデザインを考えた奴は?
誰が見てもパワードスーツとは思えない。 誰が見ても防御力が上がるどころか
下がりそうな外見だ。 朝倉に言わせると昔中国で使われていた鎧と外見が
似ているという。 どこかの漫画で着用すると逆に怪我するような鎧を見たことが
あったがその印象にとても似ている。
結局試着することもなく、うちの会社の研究部送りになってしまった。
新手のコスプレをしないで済んでほっとする。


朝倉は新たに撮影された月の衛兵らしき人たちの航空写真を見て品定めをしている。
皆細面で誰が見ても兵士に向かない外見なのだが、そんな問題はみなスーツが解決
するから問題ないらしい。
近くを通りかかった北白河に朝倉が「この子かわいいでしょ」と言って一人の
青年の姿を指さした。 この発言に周囲の注目が一気に北白河に収束する。
北白河は一瞥すると「これなんてもやし?」と一言放った。
部署が沈黙に包まれた。


航空写真の中にひときわ目立つ別嬪さんを見つける。
私の視線が釘づけになっていたのを見た朝倉が「好みの子か」と茶々を入れてきた。
魂魄がその話に乗ってくる。「90点」それが魂魄の評価のようだ。


周囲が騒ぎ出したのでとうとうボスが乗り出してきた。
私が興味をもった写真を凝視すると驚くべき事を言った。
なんとこの女性はうちの会社の新しい取引先だというのだ。
取引開始日はまだ未定だが、いつの間にか取引先コード発行と口座開設がなされていた。


一体何を貿易するのかは想像できないものの、うちの会社が隙間妖怪を飛び越えて
何かしらビジネスを企てていることはこれまでの流れをみても分かることだ。
妖怪たちの一派が月に攻め入ろうと考えているようだが、そんなことで
本当にここの住民と商売ができるのか心配になってくる。


それよりもやたら張り切っている朝倉をなんとかしてほしい。