□月 ○日  No501 幻想の世界のカップル談義


少女妖怪が住まう世界幻想郷 そこでは数々の恋模様も繰り広げられるわけで
恋する乙女の行動はいつ見ても微笑ましいものである。
それが仮に同性同士であっても同様である。
私見であるが幻想郷では同性愛に対する偏見があまりないように見受けられる。
朝倉に聞くとちょっとした歴史的背景があるらしい。


その昔江戸時代では、同性愛というのは半ば公然と認知されていた。
戦国時代の小姓に見られるとおり「忠義」の延長線としての同性愛が存在してた。
それが武士の官僚化や幕府転覆とともに一時期衰退したと思いきや
折しも博麗大結界分離の時期に同性愛ブームが再び起こったのである。
その後同性愛を規制するような外部の教えがあまり入ってこなかったので
その傾向は現代にも続いているという次第である。


紅魔館の図書館にホモ雑誌が置いてあるのもそういう事情による物だ。
従って女性妖怪同士のカップルもそれなりに存在していることを確認している。
私に言わせれば人形遣いのアリスあたりが怪しい。
またメイド長はもっと怪しそうだ。 
聞いたら殺されることは間違いないので確認する術はない。


朝礼でうちの社員が幻想郷で仕事をしていたら危うく掘られかけたという話が出た。
八百万のカミはかなり危険で、うちの社員もどうやって断るかちょっとした
議論になった。 もしかすると何人かは犠牲になっているかも知れない。


魂魄が岡崎と北白河も怪しいと言っていた。同棲しているしどう見ても
教授と助手の関係を超えていると言う。
そんな物なのかと思って聞き流していたら傍らに北白河の姿を目撃した。
魂魄のお喋りがぴたりと止まり、何とも言えない空気が支配した。
北白河は「恋という物は障害があればあるほど燃え上がるでしょう」と
言うだけで見逃してくれた。 


朝倉に視線を移したら、彼女がぼそりと「魂魄も昔はどっちもいけたでしょう」
と漏らした。北白河の顔を見たらにやりと笑っていた。
胃の痛みのためここから先のやりとりは覚えていない。