□月 ●日  No657 幻想郷で成人病


幻想郷の成人病と言ったらなんといっても糖尿病である。
お酒の消費量が多い幻想郷では飲酒のしすぎによる糖尿病患者が少なからずいる。
また未成年での飲酒が原因で糖尿病を誘発するケースもある。
肝機能障害と慢性膵炎がセットになっている場合が多い。


人間の糖尿病も始末が悪いが、妖怪の糖尿病はもっと始末が悪い。
寿命が長いだけに付き合う期間も長いのである。
ただ、魔法により膵臓の機能回復が図れることから、幻想郷において
糖尿病は不治の病ではない。


お酒の飲み過ぎによる高血圧や心筋症も幻想郷ではよくある。
ただし塩が入手しにくいことから脳卒中は少なめである。
妖怪たちは心筋機能がとてつもなく優れているから、あまり問題にならないようだ。


さて、うちの会社でマークしている妖怪や人間達の健康状態を調べるために
尿を採取する仕事があるのだが、私はどうしても生理的に受け付けない。
小瓶を持つだけで気持ちが悪くなり、胃の内容物を戻してしまうような症状に見舞われる。
魂魄はこんな有り難いものを気持ち悪いとは何たる思考だというが無理なものは無理だ。


明羅女史はそうした汚物処理はお手の物らしくてきぱきと物事をこなす。
心底うらやましいと思う。そうでなければ阿礼乙女の世話ができないから当然だ。
阿礼乙女もあと数年経つと、一人でトイレに行けなくなる。
衣服を脱ごうとしても体がついて行けずに失禁するためだ。
実は本人が一番辛いのもその時期だそうだ。


朝倉から汚物処理について場数を重ねて慣れないと駄目だと言われた。
少なくても明羅女史が体をこわしたときは代わりにならないといけないらしい。
魂魄が横から、代わってやると言ってくれた。
朝倉は本人のレベルアップのためだから手出しをしないでくれと言う。


横から北白河が口を挟んできた。
「汚れた衣服はどうするの?」
なぜか訪れる沈黙。


北白河はパイプ椅子を朝倉がピコぽんハンマーを取り出したので
私は危険回避のためその場を後にした。