□月 ●日  No689 顕界の風呂 幻想郷の風呂


北白河が風呂のカタログを片手に色々思案している。
足を伸ばせる風呂を買おうと考えているようだ。すでに見積もりもとっていて
商品を何にするかで岡崎と揉めているらしい。


女子社員が幻想郷から戻ってくると真っ先に風呂に入るらしい。
幻想郷の浴室は概ね公衆浴室。 博麗の巫女などの特権階級は五右衛門風呂などが使えるが
殆どの場合は所謂サウナと相場が決まっている。
現地法人の社宅には現代の風呂があるのだが、概ね狭いために浴槽に入るのは
少し厳しい。
顕界に戻って湯船につかるとかえってきた気になるそうだ。


だからうちの会社の女子社員は幻想郷出身者を除き概ね風呂の改装をやってしまう。
費用的には北白河の給料半年分くらいはかかっているのだがローンで支払うそうだ。
結構いい値段がする。


魂魄が、横から口を挟んできた。
幻想郷出身の妖怪たちが真っ先に驚くことは、トイレとお風呂なのだそうだ。
妖怪たちには顕界のお風呂は家の中に温泉が出来るようなモノに映るのである。
そして、二言目にはこう言う。
「非常識だ」と言うわけだ。


家の中にお風呂を作ることは実はつい最近までもってのほかだった。
湿気はシロアリを呼ぶし、建物を傷めてしまう。
幻想郷の民家は未だに厨房すら別棟になっているところも多いのだ。
だからうちの会社に勤めている幻想郷出身の妖怪たちはおおかたお風呂場を有効活用しないで
わざわざ銭湯に通ったり、会社の徹夜用ミストサウナを利用したりしているという。


北白河の見積もり書を見せてもらったら、風呂の中にテレビやら情報端末が入っていた。
もはや風呂はリビングと化しているらしい。
幻想郷にもぼちぼち現代風のポリバスなどが入って来そうな按配なので
この辺でひとつ勉強しないとと思う次第である。