□月 ●日  No690 偽装網に抱かれて


いつものように、中有の道で配達作業をしていたら目の前に小兎姫が出現した。
今度は死んでないことをアピールした苦笑していた。 だがここからが違った。
いきなり面と向かって自分を匿えと言われた。朝倉にすでに話を通しているというので
断る理由はないが、なにか危険な香りがする。


小兎姫と一緒に会社に戻ったらすでに朝倉からの指示書が来ていた。
以前構築したセーフハウスに身元を移すようにということだった。
一体何が起こったのか把握するために事情を聞くことにする。
小兎姫は散々もったい付けてなかなか教えてくれなかったが、結局朝倉から言われるよりは
正確だと言う理由で聞くことができた。横に明羅女史もついてきてくれている。


まず渡されたのは写真だった。
月に置いてあった乗り物や観測機器が無残に破壊されていた。
月の民達はこれを月に侵略した人間を退けた証拠として考えている。
人間達はこの件を隠蔽した「ように」見えた。


壊された兵器をよく見ると大半がメカトロニクスを応用した無人のモノだと
いうことがわかる。 しかも武装も申し訳程度のものしかないし
あくまで外見的ハッタリを目指した武器ばかりであった。
小兎姫はこれを月人の攻撃法を推し量るために撒いた餌みたいなモノだという。


月人は地上の民に進化を促すためと称して武器を提供し続けていた。
だが、それは神の武器を手に入れるという信仰と地続きのものではなく
全く違う利権構造を生み出す結果になったことは以前話したとおりだ。


このような事態になったのは月の技術をコピーできるだけの技術基盤が出来てからである。
武器を与えられてもそれを利用する機構がなければただの技術パテントである。
しかしその運用方法は謎に包まれていた。現代戦の運用法ではなく本来の運用方法を
調べてみないと兵器の使い方を理解することができない。
彼らは勝利したと思うだろう。彼らのメンツも保たれる。 まさに一石二鳥だった。


小兎姫はこの莫大なお金が動いたプロジェクトを追跡しているうちに
身を隠すしかない事態に追い込まれたと言っていた。
まさか相手方が幻想郷まで追ってくるとは考えにくいが色々面倒が起こりそうで困った事だと思う。



これから一体何が起こるのかはよく見極める必要があるようだ。