□月 ●日  No790 部署内に漂う恐怖


妖怪でも魔法使いでも避けがたい日が存在する。
それはそう アノ日だ。
そもそも魔法使いはもともと人間だ。 寿命が延びるということは当然ホルモンバランスも
安定化して閉経までの期間も大幅に伸びることになる。
しかし、無理やり伸ばした寿命である。 ちょっとしたことでバランスは乱れそして。


今日は最悪の日だった。
この日に限って幻想郷の仕事がない。
普段の月なら直行届をだしてすぐに幻想郷へ旅立っているところだ。
朝、朝倉の机を見たらどす黒いオーラが立ち込めていた。
かなりやばい。


アノ日の朝倉は風見女史よりも危険な存在である。
戦闘能力だけなら風見女史と互角の能力の持ち主だ。
彼女が大暴れしたらそれだけで部署丸ごと壊滅するだろう。


しかもよりによって冷たい炭酸飲料を出すうちの新人。
空気を読むんだとジェスチャーするも、理解できずに丸のジェスチャーをする。
どうしようもない。
そうしている間にも朝倉の機嫌は悪くなっている。 顔が真っ青になってイライラした表情。
心の中で定時になれと念じる。


幻想郷からスクランブルの仕事がやってきて喜び勇んで突入。
大した用事じゃなくてすぐにとんぼ返り。 
博麗の巫女がまたまた万引きをしたらしい。 被害の確認と清算処理だけで済んでしまった。
このまま幻想郷で体調が悪くなったと言って帰らないって手もあるのだが
そんなことをしたら朝倉に怒鳴りつけられるかもしれない。


帰社したらどす黒いオーラがさらに強くなっていた。
北白河と浅間は無視して仕事をしている。 私は自分に降りかかりはしないかとびくびくしている。
魂魄は白玉楼に出張に行ってるときている。 たまらない。


とにかく静かに仕事をする。 幻想郷で仕事をしているよりとてつもなく気を遣う。
とにかく朝倉の視覚に入らないように、トイレに行くのも我慢してひたすら時間が過ぎるのを待つ。
朝倉から呼ばれるたびにびくっとする。 彼女の機嫌を損なわないように言葉を選ぶ。
とにかく今日さえしのげばきっと大丈夫だと信じて行動する。


夕方 日が沈みだすとさらに朝倉の不機嫌はピークに達してきた。
見かねたボスが、なにやらティーカップを差出し、飲むように促した。
それはジャスミンティーであった。


ジャスミンには体を温めホルモンバランスを整える効果がある。
体が温まって少し落ち着いたところで、ぐったりした朝倉を送るはめになった。
気がついたら岡崎も北白河も浅間も帰っていた。
逃げ足が速すぎる。


彼女を送ってとりあえずそそくさと家を後にした。
チキンと言われてもいい。 命あってのものだねだ。