□月 ●日  No1131 OOPARTS


「おい、星どうなっているんだ。」
幻想郷地下奥深くに埋まって言う船を発掘すべく毘沙門天の弟子を名乗る高位妖怪に
道案内を依頼していた八雲商事発掘部隊と魂魄 北白河の一行はすでに制圧されていた付近を
見て毒づいた。
しかも何故か外の世界の武装をしているときている。明らかに幻想の世界の道具を狙う者の
仕業であることは容易に想像つく。


事の発端は紅魔館の中に月の都へ飛翔するためのロケットを建造しているという情報だった。
すぐに資源不足になるのは目に見えていたので魂魄が協力を申し入れたのだ。
問題はロケットを構成する船体である。単純に木製でも良いのだがそれでは
幻想郷に数多くある霊的謂われのある木を伐採しないといけないことになるだろう。
それは紅魔館にとってもベストの選択ではなかった。
そこで、代わりの資源を探すことになったのだが、そこで話に出たのが天翔る船の話だったのである。
情報源は魔界の神様である神綺であった。


「こりゃ、一杯食わされたな。」
魂魄が身を隠しながら、神綺に嵌められたことを悔やんだ。
神綺にしてみれば魔界に外の世界の人間が侵入してきたのだから面白くない。
鬼たちをけしかける位なら外の情勢に詳しい八雲商事の面々をぶつけて相手の戦力を推し量れば
良いのである。


このままでは調査もままならない。
「おい、ちゆり何かスペルカードはないか」
同行している北白河に向かって魂魄が叫ぶ。朝倉理香子の推薦で同行することになった。
北白河も一応は八雲商事の一員である。弾幕戦も全く経験していないわけではない。 


「無いけどパイプ椅子はあるぜ。」
コレジャナイロボか」
コレジャナイロボは以前サッカーの試合で利用された、巨大人型兵器である。
あの当時のコレジャナイロボは自分で歩くこともままならない欠陥品であったが
改良を加えられ、現在では実用に足る性能を実現しているという。


幸いパイプ椅子は北白河の傍らにある。本来ならツッコミに使うのだろう。
あとは椅子を空中に投げ込めば良い。
だが、パイプ椅子を見た星が驚きの表情を見せた。
「まさか、飛倉の秘宝をお前が持っていたとはな。」
飛倉の秘宝? パイプ椅子を投げようとした北白河の手が止まった。 


「なるほど、朝倉の奴、そういうことか」
勝手に納得している星を北白河はのぞき込んだ。
「なら、私が本当の使い方を伝授してみせよう。」
相手の意図を察しきれず北白河の表情がこわばった。


パイプ椅子を北白河から奪った星は北白河がやろうとしていたようにパイプ椅子を宙に
投げると、何故かその上に飛び乗った。


「変化! 非想天則」
星の叫びと共にパイプ椅子は変化を始める。
体躯を構成する骨が組み上がると、その周囲を小型弾幕がまるで張り子を構成するかのように
人型の形へ形成されていく。 
だが、それは北白河の知る姿ではなかった。 
その姿はより人間の姿に近く、頭部には巨大な角が生えている。
背中に深紅の巨大なマントが羽織られ、それはかつてどこかで見たような
スーパーロボットに酷似していた。


その一連の動きに敵が気づかないわけではない。だがそのあまりの姿に敵の動きが一瞬止まる。
止まるのも無理もない話だった。どう考えても兵器的合理性に欠けた姿をしていたからだ。
だが一瞬止まった動きが既に致命的だった。
高く舞い上がった非想天則はたちまち戦闘車両を手刀で薙ぎ倒す。
敵もRPG-1対戦車ミサイルで応戦するが、外面が剥がれるだけで、また元に戻ってしまった。
みるみるうちに敵が戦闘不能に陥っていく。
その姿を魂魄は呆然と見ているしかなかった。


結果はどうあれこの辺一体を制圧することができた。
拘束された兵士は霊能局に送られることになるだろう。 
これで紅魔館にあるあの木偶の坊を動かすことが出来るかも知れない。


調査の過程でそこに棲んでいる妖怪の封印を解くことになった。
これによって、幻想郷に船が存在するという謂われが開放されるという。
それは紅魔館のロケットに少なからず影響されることだろう。


そして復活した妖怪を見た北白河の顔がこわばった。
その衣服は北白河が着ていたあの服と全く同じだったのだ。