□月 ○日  No502 縁のふしぎ


縁というものは本当にわからない。


朝倉が全身ボロボロの少女妖怪を会社に連れてきた。 
面識があるらしく丁重な対応をするように念を押された。
北白河は彼女に着せるためであろうか色々な服を見繕っている。


着替えを済ませ泥を払った少女妖怪はとても美人であった。
自分にはまずご縁がなさそうな妖怪である。
番茶を出されて少し落ち着いたと思ったらその少女はざめざめと泣き出した。
事情を聞いたら冬眠していたら大きく寝過ごしまったらしい。
仲良くしていた人間達も何処に行ったのか分からなくなったという。


妖怪の中には冬眠をする者が結構いる。
代表格は隙間妖怪で、冬の間はあられもない姿で寝ているともっぱらの評判だ。
しかしながら妖怪の中には冬眠したまま何年も寝てしまう輩が少なからずいる。
この妖怪もその一人だろう。


こうした妖怪は可哀想であるが幻想郷に送られることになっている。
様々な要因で今の世の中との縁が途切れてしまうと妖怪の身体にも
異常を来す場合があるからだ。
朝倉に頼まれて幻想郷送りの手続きをしていたら、お嫁さんになると
約束した人間がいるから嫌だとごねてきた。
たまにこういう妖怪がいて困る。 実際に捜索するととっくにこの世を去っている
場合が多く、たいていの場合徒労に終わる。


その人物がだれかと訪ねたらどこかで聞いたことがある名前が出てきた。
住んでいる場所などを訪ねたら横で聞いていた北白河が素っ頓狂な声を出した。
うちの商管部所属のおっさんじゃないかというのである。
そのおっさんは誰が見ても女性に縁がなく、意外としか言いようがないのだが
たしかにうちの会社に所属するためには妖怪との縁が必要である。
あり得なくもないが納得いかない。 引き合わせたら実に20年来の再会だという。


困ったのは朝倉 幻想郷送りがキャンセルになって色々ややこしくなってきた。
おまけに速攻婚姻届を出したいと言いだしさらに泣きたくなってきた。
戸籍の処理をするのだって大変である。 年末でただでさえでも忙しいのに
厄介ごとが増えて本当に苛立った。
別に嫉妬しているわけではない。 縁とはわからないものなのだ。