□月 □日  No604 かくも偉大は金の力 そしてコネ


ボスが社内通達を見て難しい顔をしている。
見ると交際費切り詰めの通達であった。 会社的には切り詰めるほど業績が悪いわけではない。
最近、政治家との接待などで問題になっているため、交際費切り詰めの名目で規制しようという話なのだろう。


ボスは呆れた表情でこんな話をしてくれた。
そもそも接待というのは、個人的楽しみというより省庁の事情や本音をぶちまけられる場であるという。
政治の世界では料亭政治と言うように、料亭の中で段取りなどが決められて国会の中でシャンシャンで
納まるように意見調整をしたりするのであるという。


ボスに言わせれば、接待が過度に規制されると政治が混乱しやすいらしい。
政治の混乱はすなわち経済政策にも反映されて不景気にもなるという。
かつて妖怪たちは江戸時代に幕府に取り入って身元を保証してもらう者がいたらしい。
ところが、当時の老中が賄賂のため退陣してしまい、綱紀粛正が行われたという。
そのとき多くの妖怪たちは没落したり、身を隠したりと散々だった。


ところが過度な綱紀粛正により結局、江戸の経済は停滞。酷い不況に陥ってしまった。
当時から資金的にも力をつけてきた妖怪たちが離れてしまったためお金の巡りが悪くなったという。
結局その老中も不景気の責任をとる名目で退任してしまった。
白河の清き流れに棲みかねてという歌が今に残っているらしい。


朝倉はホームパーティはどうするかと訪ねてきた。
ボスはパーティはこれまで通りやるという。別に会社の交際費を使っているわけではないし
個人的な集まりとして続けるらしい。


私はこうした接待に対する規制のことよりも、江戸時代からすでに妖怪たちが強大な経済力を
持ち始めていたという話に興味が引かれた。 
幻想郷を維持する費用は小国を維持するくらいの水準になっている。
そんな金を無尽蔵に引き出すことができる妖怪資本の恐ろしさを感じてしまった。


そのことを朝倉に話したら、笑いながら「月の技術一個パテントをとるだけで、膨大なお金が転がり込んでくる」
と言っていた。
幻想郷の商売そのものは知的財産を合わせればおおむね黒字だという。
月が幻想郷の一部になればもっと大きな金が転がってくるかも知れないと、朝倉は笑っていた。


妖怪たちが恐怖で人間を支配するのはもう古いそうである。
もしかすると、妖怪が人間を怖がらせていることすらすでに幻想行きしているのかもしれない。