△月 □日  No474 遅刻魔朝倉


遅刻魔朝倉が二日酔いになって倒れているというので社用車で出迎える羽目になった。
冴月達のようにマンション住まいだと思ってその場所へ到着するとなんと建物がない。
更地に止まっているのは一台高級キャンピングカーだった。
まさかと思って中を覗き込んだらあられもない姿の朝倉を発見して絶句した。


昔の生活を今に残す妖怪たちや男とできて上京したなど特別なケースは別として
都市部に住んでいる技能持ち妖怪は結構裕福な暮らしをしていると聞いていたが
まさか住所不定だとは思わなかった。
モーニングコールを数回鳴らしようやく起きてもらって事情を聞いたら
建て替えるのが面倒になったという。
所得がないわけではないのでこうしてキャンピングカー暮らしをしているそうだが
せめて岡崎や北白河みたいにマンション暮らしにすれば良いだろうにと思う。


早く出社しろとせかしてもいつまでもシャツを羽織ったままトーストを咥えているので
少し怒ってみたら、そんな状態では幻想郷で仕事できないぞと言われた。
それでもどうにか無理矢理車に乗せようとしたら、近所のおばさんと井戸端会議を
はじめる始末である。 胃が猛烈に痛くなってきた。


そんな朝倉の自宅は本来幻想郷内に存在する。 式神を駆使しているため
建物内は常に整理されていると朝倉の弁である。
これは会社に在籍している妖怪たちも同じらしい。
ただ冴月は元々幻想郷に住んでいない妖怪のため特定住居がないという。


ためしに北白河にボスの幻想郷での居住地を調べてもらったら
何故か博麗神社の住所が出てきた。
ボスはもしかすると定住する場所がないのだろうか。


朝倉は会社でこってりと絞られたが、特に変わらず仕事をこなしているようだ。
そして何故か社内では私の覗き疑惑が駆けめぐることになった。
魂魄に事情を聞いたら朝倉が嬉しそうに周囲に吹聴しているらしい。
玄爺が「朝倉の噂はみんな話半分で聞いている」と言ってくれた。
以前も同様のことをやって、当時の部下が彼女と別れたそうだ。
最悪すぎて笑うしかない。
人事部に苦情を言うべきだろうか。