○月 △日  No396 本来の使い道ではないもの


最近紅魔館で水廻りのトラブルが頻発している。 
特に浴室廻りの水漏れが顕著だ。
もともと紅魔館の浴室は米帝製のネコ足バスを使用しているのだが
これらは基本的に浴槽に水を貯めてはいるようにはできていない。
特に排水廻りにおいて水を貯めすぎたときのオーバーフロー処理や
排水管の接続部分がとても弱い。
国産の浴室では水漏れは殆ど起こらないように設計段階で細心の注意がなされている。


現状では問題が起こる度に都度呼び出されて、シリコンコーキング剤での
補修を繰り返している。
酷いケースでは床のタイル目地のクラックを通って雨漏りが起こる場合もある。
雨漏りが起こっている現場、それはすなわちデスマシン妹君の部屋である。
一歩間違えれば抹殺確定だが、本人はちょっとした趣向のように見えるようで
水がこぼれるのを楽しんでいるのが不幸中の幸いといえる。


私が間に合わないときがあれば河童が駆り出されることもあるらしい。
最近は、あまりに頻発するのであきれられているようだ。
もっとも殺されるよりは幾分マシである。


見ていられなくなったのか、朝倉が私を手招きしてこう言った。
「魚を与える行為はおやめなさい」という内容だった。
朝倉に言わせれば、魚が必要なら「魚を釣る方法を教えるべきだ」というのである。
米帝製の水廻りは本来、DIYすなわち自分でメンテナンスを行うことを
前提にした設計をしている。 これをいつまでも我々が維持管理をしていたら
対応が遅れてみんなが迷惑を被ることになるという。 ごもっともだ。


ボスの許可をもらいメイド長にコーキングガンの使用法を教えてみた。
数日後、様子を見に行くと、水漏れが発生する度に時間を止めて水漏れを
食い止めているらしい。 恐るべき応用力である。


幻想の世界だからと言って何もかも管理するよりも
暮らしている人に任せてみるのも一興のようだ。