□月 ★日  No580 桃の節句


雛祭りである。 女の子の節句 桃の節句である。
幻想郷における雛祭りといえば、流し雛と相場が決まっている。
外の世界では水質汚染の原因となるということで禁止されている河川も多い流し雛だが
幻想郷ではそこかしこで見ることができる。


うちの会社でも女性社員が多いので雛段が飾られている。
ボスがポケットマネーで買ってきた奴らしい。
浅間は雛祭りで大はしゃぎである。
今日も甘酒をリットル単位ではなくガロン単位で発注してくれた。
さすがに朝倉から大目玉をくらった。
休憩室には雛あられの袋が置かれて、北白河が作った蛤の御吸物がコンロの上に湯気をあげながら
乗っかっている。


幻想郷はというと厄神様はここ数日不眠不休で作業中。
化粧ののりが悪いとボヤき、枝毛が気になると文句を言いながらせっせと流れ作業で
厄を流し雛に移している。 
もともと雛祭りというのは武家とか名主などといったムラの名士がやっていたものである。
そんなものだから厄神様のところにはたくさんの貢物が同時にやってくる。
厄を引き受けるお礼みたいなものだろう。なんとなくデジャヴを感じる光景だ。
大きな声では言えないが量こそ少ないとはいえ明らかに隙間妖怪よりも豪華だ。
厄神様が妙に金がかかった衣服を着ている理由が何となくわかった。
浅間よ、厄神様の化粧を「塗装」というのはやめてください。


雛祭りと言えば桃の節句なのだが、桃の節句のときとたんに元気がなくなるやつがいる。 
それはなんと鬼娘だ。
もともと桃には強力な退魔の力があるといわれる。 節分のときに撒かれる豆は
桃の代用品とも言われるほどだ。
月の都では桃がなった木をそこかしこに植えてバリケードにしているらしい。
てっきり甘酒を飲んで上機嫌だと思いきや少し意外である。
鬼は外と言われないため、直接的な害はないらしいが、それでもかなり過ごしにくいそうだ。
お酒をかっくらってほぼ一日中寝てしまって過ごすらしい。
博麗神社はいい迷惑だろう。


ちなみに数ガロン買ってきた甘酒は大半浅間の胃袋に収まった。
どういう胃袋をしているのだろう。