以前取り上げた外の世界からやってきて商売を始めた者の店が閉店していることに気づいた。
周囲の圧力で閉店に追い込まれたと思いきや周りに訊くと、周辺の店も同じように
その店を研究して良いところを取り入れながら競争していたらしい。
こうなってくると、これまでの蓄積や顧客そして資金的体力がものをいう。
外からやってきて鳴り物入りで商売を始めた者は、結局商売の免許状を更新する費用が払えなくて
閉店する羽目になってしまったらしい。
結局商売としては一年程度の歴史で終わってしまったということだ。
もっともこれはあまたの商売の世界では日常茶飯事である。
幻想郷というところは建前上すべてのものを受け入れる。
建前と書いたのは新しく入った者と古くからいるものとはどうしても軋轢が生まれてしまうからである。
例の神社がやってきたときもそうだった。得体の知れないものとのコンタクトから始まり
宴会を開いて幻想郷の色に染めていく試みがなされた。
岡崎に言わせれば、古参と新参の衝突というのは単に既得権益を守ろうとする者による過剰反応が招くという。
岡崎は学会に幻想郷の存在を証明してみせたが、最終的に妖怪や人間たちの利害関係の前に
真実が歪められて学会を放逐された過去がある。
北白河は空気を読まないのがご主人の問題だと言っている。 古参の教授連中への根回しが足りないから
そうなったと妙に冷静である。 だからこそ北白河は岡崎に学会を追い出されてなお付いて行っているのだろう。
魂魄は阿礼乙女が銃を取り扱った時、彼女を非難していた時期があったらしい。
まさか自分が銃を取り扱うことになろうとは当時の彼も思っていなかったそうだ。
外部からやってくる新しい価値観に対してどう向き合うか、結局のところは今までのものを大切にしつつ
新しいものを取り入れれば良いという結論に至ったという。
さて、今回の件で面白い事に気がついた。
新しい店ができたときに、市場を荒らされたと声高に主張している店も一緒に潰れていたのだ。
おそらく、対抗策を練ろうと考えずに商売敵を批判することで思考停止した結果なのだろう。
逆にそれらをバネにして新しい商売に至ったものが生き残ったと思われる。
幻想郷はすべてのものを受け入れるが
「ありのままを受け入れるわけではない」
総体を変化させながら受け入れて自らの構造強化を図る世界だと考える。