□月 ●日  No694 たべたつもり


お墓やお地蔵さん色々なところに供えてある食べ物や果物。
これらは信心深い人が、そこで祀られている人やカミに感謝するために
供えているものである。
それを妖怪たちが食べる訳なのだが、その中で不思議な現象を目撃した。


それは納品の帰りのこと。
お地蔵さんに前に鴉天狗が立っていて、なにやら口に運んでいる。
よく見てみるとなんとぼた餅を食べていた。よほど美味しいのか幸せそうな
表情で食べている。


がしかし、鴉天狗の手を見て驚愕した。 なんとぼたもちが減っていないのである。
目の錯覚なのか確かにぼた餅をとっているのに減っていない。
まるでできの悪いアニメでも見ている気分だ。
鴉天狗がこちらに気がついて気まずそうな表情をしていた。


せっかくなので、鴉天狗に先ほどの手品のタネを聞かせてもらった。
妖怪たちはお供え物に込められた念を食べ物として食べることができるらしい。
だからお供え物は減らないらしい。 実は一度お供えして謂われを作れば
あとはお供え物を持って帰っても構わないそうだ。
お供え物を置いていくのは二つの意味がある。
一つは生態系への還元、もう一つは旅行者の緊急食料である。
妖怪になることができない動植物にとってお供え物はご馳走だったりする。
だから妖怪たちはお供え物に直接手をつけないそうだ。


面白い話だと思って朝倉や北白河たちの前で同じ話をしたら、
朝倉が鼻で笑っていた。
謂われを食べても甘みを感じて食べた気にはなるのだが実際には栄養を摂っていないらしい。
北白河が「そういえば鴉天狗のスカートサイズが一個落ちてました」と言っていた。
要するにダイエットだった。沢山食べても太らないダイエットである。


話を聞いてきた浅間がこの日の文々。新聞の複写を持ってきた。
詐欺師兎がレクチャーする新世代のダイエットと書いてあった。
なぜか憮然とした表情で、「ちょっとチクってきた」と言っていた。


結局お供え物をいただいているお地蔵さん連盟なるところから、
お供え物ダイエットはお供え物の理念に反すると、中止要請がきたことを
今日の夜知った。