□月 ●日  No693 すとれんじびじたー


四半期締めということで香霖堂へ棚卸しの手伝いへ行く。
万引き常習犯の博麗の巫女、霧雨のご息女、そしてメイド長がいなかったのだ
不明在庫も余りないに違いない。


実はこのところ月情勢の緊迫化から博麗神社の工事とあって香霖堂がノーマークだった。
調べてみるとあるわあるわ記載漏れ。
うちの会社とか一般流通から買った商品はきちんと記載されているのだが
拾い集めたモノは記載されてないのである。
原票処理をしていて帳簿上では不明在庫がなかったので完全に油断していた。


思った以上に手間が掛かる棚卸しを汗だくで済ませていたら、
いきなり客が入ってきた。 このタイミングで客が来られると凄く困る。
やってきたのは金髪の女性だった。


私自身、特に危険な妖怪の姿は頭の中にインプットされている。
しかしその女性はその誰もと当てはまらなかった。
いや、なんとなくであるが全く別のところで見覚えがある。


開口一番いきなり「桃売ってませんか」などと変なことを言い出した。
缶詰を手渡したら不思議そうな顔でこれは一体何だと聞いてくる。
幻想郷の流通システムで新鮮な桃を手に入れるのは不可能に近いはずである。
まさかと思って缶切りを用意して中身を見せてみた。どうやらこの娘
缶詰というものを知らないらしい。
香霖がお代と五月蠅いのでお金を立て替えておいた。


あまりにカオスな店内を物色する女の子。 しゃがんでいる彼女を上からのぞき込んで分かった。
月の都に住んでいた女の子だった。
すぐさま朝倉に連絡。 聞けば兎たちと一緒に観光旅行に来ている月人が居るそうだ。


何をしているのかとのぞき込んでみたら、なんと桃を食べていた。なってこった。
おまけに彼女は奇妙な味の桃だと言っていた。 シロップ漬けだから当然だ。


桃をあらかた食べ終わると彼女はご馳走様と言って店から去ってしまった。
不明在庫が一つ増えた。
仕方なしに私が買ったことにした。
どうして幻想郷のルールも教えないまま別世界の人間を連れ込んだのか理解に苦しむ。


愚痴っていたら香霖に
「それをどうにかするのがお前の仕事だろ」と言われてぐうの音もでなくなった。
厄介者がまた増えた気がする。