□月 ●日  No768 誰が見ても普通の人


魔界にある地霊殿へ初めて納品に行くことになった。
ここの主人が一癖もふた癖もあるらしい。
ぶっちゃけ読心術が使えるそうなのだ。


朝倉に言わせると読心術というものはある程度の話術があれば
それに近いまたは準じたことができるという。
彼女が変わり者扱いされるのは、相手の心が読めることを相手に言ってしまうからのようだ。
自分の能力があまり人に褒められた物ではない場合、気味悪がれるのは至極当然のことだ。


ともあれ、彼女の対策は意外と簡単だ。
考えていることをそのまま口に出せばいい。
顕界にも心を読める人材がいて、犯罪捜査にかなり役立っているという
話を聞いたことがある。 その人物が書いた本で予め予習してみた。


実際にお会いすると綺麗な人でびっくりする。
綺麗な人という印象がダイレクトに伝わっているのか、主人も顔を赤らめている。
あんまり卑猥なことを考えてはいけないなと考えていたら
その考えていたことまでもが伝わってしまい苦笑する。


相手が何故物怖じしないのかと尋ねるので
正直なところを答えておいた。 一癖もふた癖もある妖怪どもを相手にしていれば
ぶっちゃけ地霊殿の主人でも大したことはない。
むしろ、道理が通じる分普通の人とかわらない対応ができる。


ファッションセンスが現代風でかなりびっくりする。
幻想郷の住民とは思えないような衣服を注文される。
ファッションにうるさい北白河や浅間の応援がいりそうだ。


すると浅間とは一度会ったことがあるらしい。
常時酩酊状態にあるのと、バックにいるコノハナサクヤヒメの姿が見えて
大分やりづらかったようだ。成る程私が狩出された理由がよくわかった。
普段相手の心がよく見えていると全く見えてこない人物を相手にしたとき
とても不安になるようだ。
気持ちはよく分かる。


ペット屋敷という評判を聞いてゴミ屋敷と思っていたら
ここのペットはやたらきれい好きでペット自身がメイド長並みのきめ細やかさで
清掃を施しているようだ。 
莫大な数の掃除用具の発注がそれを物語る。
頭の中で文明の利器を変換していると、主人が顕界で使っている掃除用具が欲しいという。
外の世界の衣服を注文している理由がわかって少し微笑ましくなった。


朝倉が大丈夫だったかとか魂魄が出入り禁止にならなかったかと盛んに聞いてきたが
私にとってはむしろ上客と言っていい人だった。
自分の考え方がスレたのか、それとも変態ばかりを相手にしていたのかは分からないが
とりあえずこれだけは言える。


紅魔館に逝くくらいならこっちの方が遙かにマシ。


以上