さすがにこの時期になると寒さが身にしみてくる。
そのせいかどうかは知らないが最近は寒さ対策で地下に潜る妖怪も増えてきた。
なにせ地下はなんだかんだ言っても夏は涼しく冬暖かいいい場所である。
空を飛んでいるくせに寒がりな妖怪たちは、次から次へと地下を目指すことに。
確かに地下はとても過ごしやすい。
紫外線も気にしなくていいからスキンケアも楽と来ている。
隙間妖怪が地下を封じたくなるのも当然だ。
居心地がよすぎて地上にいるのがばからしくなる。
しかも今は灼熱妖怪の余熱でとても暖かだ。
そういえば地下に棲む妖怪はずいぶん丸くなっているケースが多い。
まるで南の島の原住民のような気質だ。
特に気質の変化が大きいのはやはり鬼たちだろう。
無理に力を振るう必要もなくなった鬼たちは。
地下の綺麗な水を利用してお酒を造るようになった。
だから無理に地上に出ようと考えないのである。
地上よりもこちらのほうが遙かに暮らしやすいのだから当然だ。
鴉天狗が冬の幻想郷地下ツアーで荒稼ぎを計画しているらしい。
白狼天狗に話を聞いたら鴉天狗の新聞を体に巻いて寒さを凌いでいるところを見て
今回の企画を考えついたようだ。
列車を貸してくれと言われたが丁重に断った。
実は根本的な問題を抱えているからである。
鴉天狗のツアーはそこそこ人を集めることに成功したらしい。そしていざ出発。
堪能した後、戻ってきた彼らを待ち受けていたのは、鼻をつまんでいる人たちだった。
実は地下は独特の臭いが立ちこめている場合が多い。
空気は淀みやすいし、紫外線による殺菌作用も期待できないため
どうしても菌が繁殖しやすいのだ。
結果、ものすごい臭いに包まれることになったわけである。
また火山近くでは硫黄の臭いも大問題だ。
温泉の臭気といえばそれまでだが、やはり有害な臭いは回避されたい。
鴉天狗は臭いは予想外だったが儲かったと言って喜んでいた。
朝倉は横でぼそっと、鴉天狗は臭いを気にしないから仕方がないと言っていたのが意味深だった。