□月 ●日  No816 幻想郷の語学


幻想郷では概ね我々の国の言葉が通じる。 言葉が通じるためには
妖怪の能力を利用する者、本気で言葉を学習する者様々である。
月人のように翻訳機を利用するケースもある。


概ねと言ったのは若干の方言があるということだが
自称現人神の言葉があっさり通じることからも日常生活に支障が出るほどではない。
強いて言うなら「ぴちゅる」という言葉が捨てるという意味で使われる。
身代わり呪符が発動する瞬間の音を言葉にしたものと思われる。


幻想郷のように多国籍の妖怪が同時に住う場合どうしても
言葉の問題が発生してしまう。 言語とは文化そのものである。
思考形態も言語に大きく依存することが多い。


聞けば上白沢の塾も元は語学塾だったという。
現代ではグローバル化の進行で予めここの言葉を学んでから幻想郷入りする
妖怪もいるそうで改めて妖怪たちのパワーを感じてしまう。


ここでヴァンパイアの主人について取り上げておきたい。
多くの場合、妖怪たちは語学の問題を解決してから幻想郷にやってくるのだが
彼女たちはそうではなかった。
一説によるとメイド長は元々通訳だったという話もある。
そうでなければ一介のメイドが主人の側近としていられるわけがない。


だがヴァンパイアの主人はそうしなかった。 むしろデスマシン妹君と共に
積極的に語学を学んでいた。 冴月が初めて紅魔館に突入したときには
すでに幻想郷の言葉が通じていたのだというから驚きである。
相当の努力がなければ不可能に近い。


そこのところをメイド長に聞いたところ、面白い答えが返ってきたので
日記にしたためることにする。
ヴァンパイアの主人は自ら語学を学んで幻想郷のシステムを理解することで
政治的パフォーマンスをしたというのである。


考えてみればわかるが誇り高きヴァンパイアがわざわざここの言葉を理解する必然性は
ほぼゼロと言って良い。
だがヴァンパイアの主人が語学を学べば、言葉が通じないことをいいことに
自分の都合のいい交渉仕掛けてくる隙間妖怪たちに対抗することができるし
自分が文化に対して柔軟性を持つ懐の深さも同時にアピールすることができるというのである。


つまりヴァンパイアの主人は異変を起こす前にすでに相当幻想郷について
研究を重ねていたと言えるわけで、もしかすると紅霧異変と呼ばれる事件も
その内実は気まぐれでもなんでもなく最初から仕組んでいたことと言えるかも知れない。


ノーレッジ女史は時間が余っているから退屈しのぎでしょうと言っていたが
やはりカリスマはカリスマなのだと心から思ってしまった。



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