妖怪の智恵はなかなか侮れないものがあると思う。
そんな考えに思い至ったのは、学生時代の友人に会ってからのこと。
景気はどうだと尋ねたら、景気云々より人間関係の話になってしまった。
最近、同僚との関係がぎくしゃくしていると言う。
私が幻想郷で仕事をする前のことだが、友人の会社がとても魅力的に
映っていた時があった。
連絡事項はメールで行い、仕事は徹底的に効率化がなされおり
自分の仕事に集中できる環境が整っていた。
一方うちの会社といえば、連絡事項は朝礼と直接指示が基本。
会議は長引くし、お世辞にも効率的とは言い難い。
少し前そんなことを愚痴っていたら、今のボスに窘められたものだ。
「いずれこの仕組みは上手くいかなくなる」と言うのである。
その当時は「そんな馬鹿な」と思っていたが、蓋を開けてみたら
結局その通りになってしまった。
確かに幻想郷での仕事は大変だし脱落者も多いのだが
そこまで対人関係がぎくしゃくすることはない。
朝倉はあの調子だけど基本的に面倒見がいいし、北白河は口うるさいが
監査がきたときはこっちのミスを隠したりしてくれるので頭が上がらない。
浅間は酒ばかり呑んでいるが、酒の臭いさえ気にしなければ別に何とも感じない。
ボスに言わせると、効率的なやり方に見える能力成果主義や効率主義は
人材のスペックを1以上上げることができないらしい。
重要なことはチームを組むことによる意思統一であり、
その時間を多く採ることが結果的に大きな仕事をするために役立つのだという。
何故このような結論になったのか尋ねたら予想外の答えが返ってきた。
博麗大結界の設計思想の逆転だというのだ。
つまり妖怪たちはチームを組まないもしくは組みにくいよう仕組まれている
というのである。
妖怪のスペックは今もって高い
高度に組織化したら現代でも十分な脅威である。
だが隙間妖怪は一人で十分戦えるスペルカードルールを適用した。
それは同時に妖怪たちが各個撃破できるようにしたものだったらしい。
会社の今の仕組みが博麗大結界生成時のノウハウによって支えられていた事実は
かなり興味深いことだった。
ちなみにうちの友人だが、会社を辞めようと考えているらしい。
うちに来いよといえなかったのは、まずデスマシン妹君の顔が浮かび
風見女史の顔が浮かび、そして朝倉の顔が浮かんだためだというこのは言うまでもない。