□月 ●日  No826 幻想郷で破産したら


年末も近くなるとうちの会社に怪しい売り込みをしてくる営業マンが多数やってくる。
今年の資金繰りが厳しいところはかなり必死に売り込んでくるのだが
あいにく幻想郷で使わない物は買うことが出来ない。


こうした会社の中でも危ないと思ったら金貸しの天狗達に聞くのが一番だ。
そういう情報は彼女たちに真っ先に入ってくる。 
自分たちがカモにする大切なお客だからである。


ところかわって幻想郷でも年末となったら運転資金の問題がちょろちょろ出てくる。
幻想郷の商家も破産とは無縁ではないのだ。
しかし幻想郷では株仲間のような組合組織によりある程度のソフトランディングができる
仕組みとなっている。 その代わり会社更生法などに代表される公的支援は存在しない。
資金繰りに悩むのは人間であっても妖怪であっても同じである。
妖怪がやや有利と言われるのは寿命の長さも相まってお金を返して貰える確率が高まるからだ。


人間と妖怪同士で金の貸し借りが行われたとき何が起こるだろうか。
基本的には組合が仲立ちして整理解体をしながら債権者へお金が配分される。
それでも紛糾する場合、幻想郷では、妖怪退治の代理人を使ってのスペルカード戦である程度の有利不利が決められる。
ある程度と書いたのは、債権者の要求はどこまでも通るわけではないからだ。
だいたいの折衷案が出て、それでもなお上手くいかないときだけ弾幕戦になるというわけである。
年末になると霧雨のご息女や博麗の巫女が忙しくなる。最近では自称現人神も参加しだした。
だいたいこの三人が乗り込んでくると分かったら、よほど自信がある妖怪以外は
戦わなくても白旗を揚げる。 何故かと阿礼乙女に尋ねたら「とばっちりが怖い」という
答えが返ってきて反応に困った。


年末になると至るところで弾幕戦が繰り広げられる。
これから師走にかけて天狗達が慌ただしく動き出す。 彼女たちの動きを見ていれば
どこの商家が危ないかすぐにわかるというものだ。


私も何度か係争に参加したことがある。危険な妖怪たちに大立ち回りをしないといけないため
神経がすり減るのだが、弾幕戦になればうちの会社のエキスパートが戦ってくれるので
それなりに安心である。 そのことは相手も重々承知で、最初から弾幕戦に打って出る者は
ごくわずかである。
今日も岡崎が巨大ロボ「コレジャナイカイザー」で債務者が雇った妖怪を粉砕した。
図体がでかいので当たり判定は極端に大きいはずなのだが、そんなことは関係ないみたいだ。


ただ幻想郷でいいときもある。
差し押さえするときに在庫の価値が顕界なら極端に下がるのだが
幻想郷ならそこまで下がらないので、物品で返されたときの価値損失が起こりにくいのだ。
大変なのは香霖堂だが、それはまた後日取り上げたいと思う。