○月 ★日  No283 光触媒と幻想郷


結界がインフレーションを起こしても、私の普段の仕事は変わらないわけで
配達の仕事は続いている。
今日は上白沢に教材類を持っていく。彼女はプリントを作るのになんと版画を用いていたので
ガリ版印刷機を用意してみた。彼女は大喜びである。
本当ならワープロを用意したいのだが、さすがに幻想郷の人間には刺激が強すぎるので
やめになっている。


そんな上白沢が、私に「教材用の紙が日に焼けない」と言ってきた。
普通の紙なら紫外線に当たると茶色に変色するわけだが、
この紙はいつまでも白いままである。
自然の摂理に反しているというのだ。
お日様に反応している式神を織り込んでいると言ったら「馬鹿にしないでほしい」と言われた。
恐らく彼女の「知識人としてのプライド」を傷つけたのだろう。 
謝って、本当の理由を教えたいのだが私もその辺の技術はよくわからない。
仕方なしに岡崎にその理由を聞いてみた。


岡崎の話した内容はこうだ。 この紙には酸化チタンが配合されている。
酸化チタンは光触媒に使われるものでドーム球場の天井材やトイレの釉薬にも採用されている。
日の光に反応して強力な殺菌効果を生み出すらしい。
どうやら私の言っていることは”当たらずしも遠からず”だったようだ。
上白沢は、結局解釈の方法が違うだけで幻想郷も外の世界も考え方が同じだという事実に驚いた顔をしていた。
この世の中はとても奥が深い。