◎月 ×日  No286 八雲商事と豊穣のカミ


妖怪の山の一角に建設された真新しい駅
そこには幻想郷に運ばれる様々な物資が一時貯蔵される。
その食料倉庫では一ヶ月に一度の頻度で、豊穣のカミに対する
感謝の祈りがなされている。
豊穣のカミは幻想郷では実体化しており観測することが可能だが、
当の本人は芋焼酎が大好きな女の子にしか見えない。


八百万のカミの中に存在する「豊穣のカミ」 私は彼女の能力が
大地に恵みをもたらすものだと思っていたがどうやらそうではないらしい。
彼女の正確な能力は「調停」である。五穀豊穣を実現するためには
自然のバランスを調停する存在が必要だと言う。
自然というものは、その要素の一角が崩れただけでいとも簡単に崩壊する。
雨を降らすカミが暴走しても天照が暴走しても五穀豊穣は見込めない。 
また生態系の維持がなされていなければ、その土地は活力を失い最後には砂漠化してしまう。  
彼女の能力は隙間妖怪に匹敵するくらいきわめて高度なものであることがわかってきた。


豊穣のカミは多数のカミと接し調停を行うため現象面のみの観測と相まって、
しばしば性的に開放的であると誤解される。
私の印象では性に対してはえらく奥手に見える。 
実際普段女性にセクハラ発言が目立つ魂魄が豊穣のカミ相手では紳士的に
振舞っているので少しびっくりしたものだ。
倉庫の中でお神酒を受け取ってにんまりと微笑むカミさまを見て、
人間の経済活動も彼女の匙加減一つなのだろうなと
思いふと恐ろしくなった。