永遠亭を監視している天狗達より、連中が動き出したという連絡を受ける。
薬屋の一行が何故か紅魔館に向かっているというのである。
どうしたものかとあたふたしていたら、マジックショップの主人エレン嬢が
シリアスモードで事務所に顔を出してきた。
紅魔館にある例のロケットの隠し撮り写真をもって難しい顔をしている。
エレン嬢に言わせるとこのままではロケットが月にたどり着くことができないという。
どうやら論理的な欠陥があるらしい。
ロケットには博麗の巫女も乗り込むとあって皆でああでもないこうでもないと
大騒ぎになった。
もし、薬屋の目的がロケットの破壊にあるのなら看過できない問題である。
門番である美鈴女史に加勢しないといけない。
そのドサクサでさらにロケットに細工をしないといけない。
ところが指示を仰いだボスからの連絡は皆の想像を超えていた。
なんと美鈴女史を眠らせて、さらに司書をしているデーモン族を足止めし
薬屋をロケットのある部屋までたどり着かせろというのである。
ボスに言わせればロケットを破壊して貰っても
逆に細工をしても問題はないという。幻想郷のハブである博麗の巫女にとって
どちらに転んでもプラスに働くはずだと言う。
しかし、美鈴女史を眠らせる方法が思いつかない。 麻酔銃も彼女の圧倒的
運動能力の前に回避されてしまうし、食事に睡眠導入剤を入れても
たちまち感づかれてしまう。
すると今日から部署替えになって研修にやってきた浅間がそんなのは簡単だと言ってきた。
水をアルコールにすり替えて食事に風邪薬を混ぜろというのだ。
食べ合わせという言葉がある。
たとえば鰻と梅干しは胃腸が悪い人は避けた方がよい食べ合わせとして有名な
ものであろう。 天ぷらとすいかではすいかの水分で消化力が落ちて
下痢などの諸症状を引き起こす場合がある。
同じように薬の世界でも飲み合わせというものがある。
弱い薬でも飲み合わせによっては副作用が酷くなるケースもあり得る。
たとえば風邪薬とアルコールは良い例だ。 アルコールを摂取時に風邪薬を飲むと
酷い眠気が襲いかかる。 こうなると妖怪とてひとたまりもない。
さすがはアルコールを知り尽くしたウワバミOLである。
先回りをして食事を運んでいるメイドたちの目を盗んで水とアルコールを交換した。
結果は大成功であった。
薬屋はロケットにちょっとした細工をしたらしい。
エレン嬢は満足した面持ちでこれで問題ないと言って帰って行った。
私は罪悪感で心が痛んだが、ボスはそれでよいと満足げだった。
ボスが少し分からなくなった。