□月 ○日  No528 幻想郷の子供達


割と暖かい日。 仕事をしているとつい汗ばんでしまう。
こういう日は子供や妖精たちがとても元気である。
仕事中に悪ガキどもに泥団子をぶつけられた。 故意ではないことはすぐにわかる。
幻想郷では割とある風景であり怒る気にはならない。
ここで幻想郷の子供達は驚異的な礼儀正しさを見せる。
皆が集まってお詫びをするのだ。 その行動に思わず恐縮してしまうのだが
近くにいた上白沢から「当然だから堂々としなさい」と言われた。


幻想郷の子供達は幼少の頃から地域社会の中にきちんと組み込まれる。
この日私は昼と夕方にそれぞれ物を運んだのだが
子供達の姿にちょっとした違和感を感じた。
昼も夜も面子が全く変わっていないのである。


実は幻想郷の子供達は遊ぶときも年長者の解散の指示がない限り
その場を離れることができないらしい。
年長者と言っても大体9歳の少年少女達で、彼らがさらに小さな子供の面倒を見、
礼儀作法を指導したりしている。
この光景には私も驚きを隠せなかったが、ずっと昔の武士達は皆そのように
生活していたそうだ。
特に妖怪退治を生業としていた人が多く住んでいた幻想郷においては
そうした傾向が特に強いのだろう。


子供と妖精達が遊んでいるところもよく目撃するが、このときの妖精の行動も
特筆に値すると思う。 私たちに対しては悪戯ばかりしている妖精達だが
子供と接するときは驚くほど節度ある行動をするのだ。
まるで自ら手本を示しているかのようにも見える。


子供達が別の妖怪たちに驚かされたときも妖精達は自ら先頭に立って子供達を護る。
もちろん妖怪たちも本気で捕食しようとは思ってはいないわけだが
この日も氷妖精が自ら矢面に立って「私が最強だから勝負しろ」と騒いでいた。
決闘ごっこになれば子供達は氷妖精に大きな声援を送っている。
謂われが力を持つ幻想郷においてその力は下手な妖怪を凌駕するものとなる。


私は氷妖精が自分が最強だと放言しているのは莫迦だからだと思っていた。
どうやら認識を改めないといけないようである。
幻想郷は妖怪も妖精も人間も助け合いをしている社会なのだ。